投稿日:2017年8月3日
【サル対策】サルを効果的に追い払う!対策方法を紹介
投稿日 : 2024年01月18日
更新日 : 2024年03月25日
サルの被害は、農作物や果樹にとって大きな問題です。サルの侵入を効果的に防ぐためには、適切な対策が必要です。
サルの行動や好物、習性を理解し、それに合わせた対策を取ることが重要です。例えば、サルの侵入を防ぐための柵の設置やサルの嫌うにおいや音を利用した対策などあります。
※ただし、においや音による対策の持続性については後述。
また、人や犬による追い払いを行うことで、人や人里が危険な場所であるとサルに認識させることが、被害の軽減に繋がります。
参考:市民タイムスWEB「「追い払い隊」74人で始動へ 安曇野市・西山山麓でニホンザル被害」
参考:Yahoo!ニュース「人間vs.ニホンザル 「やっかいもの」から作物を守れるか」
参考:NHK「三重県内でサルの被害相次ぎ 教員がサルの追い払い方を学ぶ」
参考:大町市「猿追い犬「モンキードッグ」とは」
参考:Sippo「柴犬ら3匹、モンキードッグに認定 猿から農作物を守る 兵庫」
参考:Sippo「保護犬を「里守り犬」に育成 獣害対策に過疎地のプロジェクト」
さらに、近年ではICT技術の活用も進んでおり、以下記事のようなドローンを使った追い払いの実証実験なども各地で始まっており、今後有効な対策の1つとなるかもしれません。
参考:あなたの静岡新聞「ドローンでサル撃退 沼津市とJA実験 農作物被害防ぐ」
参考:カナロコ「ドローンでサル撃退 農産物被害で相模原市と県が実験」
参考:鳥獣被害対策ドットコム「獣害対策・自然環境調査におけるドローンの活用について」
この記事では、サルを効果的に追い払うための対策方法を詳しく解説しています。
目次
サルの生態を知ってサルを理解する
サルを効果的に追い払うためには、まずサルを理解することが重要です。サルの食性やコミュニケーション方法も知ることで、追い払いの対策がより効果的になります。
サルの分布
日本に生息するニホンザルは、
- 本州
- 四国
- 九州
- 淡路島
- 小豆島
- 屋久島
- 金華山(宮城県)
- 幸島(宮崎県)
などに分布する日本の固有種です。
出典:環境省「ニホンザルの最近の動向」
サルの食性
サルは植物食を中心とした雑食性で、
- 果実
- 種子
- 花
- 葉
- 芽
その他に昆虫などの動物質も食べます。
サルの生態
- 運動能力(特に跳躍力)が高い
- 手先が器用
- 学習能力(記憶力)が高い
- 視覚・聴覚・嗅覚は人間と同等程度
- 昼行性
- 群れを作る
- 群れで一定の範囲(遊動域)を移動する
群れについて
- 順位のある社会を持つが、いわゆるボスザルはいない。
- 雌を中心に、その子ザルたちと数頭の雄からなる十数頭から百数十頭までの群れで生活をする。
- 雌は基本的に生まれた群れで一生を過ごす。
- 雄は4歳程度で生まれた群れを離れ、単独もしくは数頭の雄グループで生活する。また繁殖期には別の群れに入り、そのままその群れで生活する個体もいる。
このように、サルは群れを作って生活し、群れの中では階層的な社会構造を持っています。
サルのコミュニケーション
サルはさまざまな表情や声、行動などでコミュニケーションを行います。
その中でも彼らが発する声は、居場所を把握する上で役立ちます。群れの個体はお互いのコミュニケーションのため頻繁に声を出すため、サルを見つける手がかりになるのです。
- 視覚と聴覚を使ってコミュニケーションをとる
- 表情、声、行動など、多彩なコミュニケーション手段をとる
- 群れに自身の位置を知らせるために様々な声を使う
サル被害の進行と影響
サル被害がどのように進行するのか
まず、サルは食べ物を求めて山から降り人里に近づきます。そこで農作物や果物などの食べ物を見つけると、その場所に頻繁に現れるようになります。
学習能力が高い動物のため、攻撃してこない人や人家などにはすぐに馴れてしまい、人馴れが進むと行動がエスカレートし、人に向かって威嚇したり、建物の中や庭に侵入することもあります。
サルの人馴れ度合いのレベルを表すと以下のようになります。
- レベル0:サルの群れは山奥に生息しており、集落に出没することがないので被害はない。
- レベル1:サルの群れは集落にたまに出没するが、ほとんど被害はない。
- レベル2:サルの群れの出没は季節的で農作物の被害はあるが、耕作地に群れ全体が出 てくることはない。
- レベル3:サルの群れは、季節的に群れの大半の個体が耕作地に出てきて、農作物に被害を出している。
- レベル4:サルの群れ全体が、通年耕作地の近くに出没し、常時被害がある。まれに生活環境被害が発生する。
- レベル5:サルの群れ全体が、通年・頻繁に出没している。生活環境被害が大きく、人身被害の恐れがある。人馴れが進んでいるため被害防除対策の効果が少ない。
参考:環境省「特定鳥獣保護・管理計画作成のためのガイドライン(ニホンザル編・平成 27 年度)」
サル被害の影響と対策
サル被害はさまざまな影響をもたらします。まず、農作物や果樹園に被害を与え、収穫量や品質を低下させることがあります(農作物被害)。
サルによる全国の農作物被害金額の推移のグラフを見ると、年々被害額は減少傾向にありますが、それでも直近(R3)で7億5000万円ほどの被害金額となっています。被害額の減少には、作付けの減少が含まれるものの、適切な防除法の開発と普及(実施)が効果を現わしていることによります。
出典:農林水産省「農作物被害状況」
サルが建物や庭に侵入することで、家屋や植物などを荒らすこともあります(生活被害)。また、人を威嚇したり、人を襲うなど身体的にも精神的にも被害を受ける危険性もあります。
サル被害に対する対策としては、まずは防護柵の設置により農地を確実に守ることが重要です。また、農作物以外にも餌になっているものを特定し、対策を行うことが重要です。
群れでやってくるサルの被害を防ぐためには、一部の人だけが対策をしていても効果が限られます。そのため地域が協力してサルを追い払う体制をつくる必要があります。地域全体でサルについて学び、群れの位置などの情報を活用することでサルに餌を与えないよう徹底し、集落への出没を減らしていく必要があります。
最後に、サルを捕獲し個体数を減らしていくことで被害を減らしていくことができますが、無計画な捕獲は群れの社会構造を壊し、群れの分裂を引き起こします。これにより行動圏(遊動域)の変化が起き、被害が拡大することや、周辺の別の群れの侵入を招く恐れもあります。
「サルの被害対策は追い払いや防除から」というのはそのためです。
捕獲を進める場合は、各群れの性質を理解し、計画的に捕獲を進める必要があります。捕獲については、免許と許可が必要なため、自治体と協力して実施するのがよいでしょう。
サル被害の進行と影響を理解し、適切な対策を行うことで、サルの人馴れや加害レベルは下げることができます。サルとの共生を目指した持続可能な対策に繋げるために、法的な制限や補助金の活用、効果的なグッズの選び方などにも注意を払いながら、サル被害の軽減を図っていきましょう。
サルを追い払うための具体的な方法
サルを追い払うための具体的な方法として、追い払い道具の利用や追い払い方法の実践があります。
追い払い道具
追い払い道具は
- ロケット花火
- 動物駆逐用花火
- 爆竹
- 電動エアーガン
- パチンコ(スリングショット)
などの道具が主流となります。
追い払い方法
上述したロケット花火、爆竹、電動エアーガン、パチンコ(スリングショット)などの道具を利用して、サルに「農地は危険な場所だ」と学習させます。その他、訓練を受けたイヌに追い払いをさせる方法(モンキードッグ)もあります。
追い払い方法としては、以下のポイントに注意しながら行うことが重要です。
追い払いの際は、サルが農地や人家周辺から出た後も、集落から離れるまで継続することが大事です。林内はサルの本来の生息場所のため、林縁で追い払いをやめてしまうと、「林に入れば人は来ない」と学習し、追い払いが終わるまで集落の様子を伺って、再度出没する可能性があります。
また、サルの群れの動きを把握することで、群れを待ち構えて追い払うことや、複数人数で協力して追い払うこともポイントです。そのためには、追い払い道具や情報の共有など、事前の準備が重要です。
サル対策は長期的な視点で行うことが必要であり、一時的な対策ではなく持続可能な対策を考えることが重要です。
また、サル対策を行う際には法的な制限なども把握しておく必要があります。サルは野生動物であり、保護管理の対象となっているため、無理な追い払いや殺傷は法律で禁止されています。
また、花火は火事や暴発による怪我等にも十分注意が必要です。例として、ロケット花火での追い払いについては、200個/日以下の使用であれば許可は不要(※)ですが、それ以上の使用については許可が必要となります。
参考:農林水産省「野生鳥獣の追払い活動でのロケット花火の使用について」
※法的義務はないが、(一社)日本煙火協会では煙火講習の受講による煙火消費保安手帳の取得を推奨している。自治体によっては煙火講習受講を義務としているところもある。
参考:(一社)日本煙火協会「手帳制度について」
参考:都留市「動物駆逐用煙火「保安講習会」 を開催しました!!」
サルを見かけたらどうする?
まず、近距離でサルを見かけたら、むやみに近づかずに目を合わせないようにしてゆっくり距離をとりましょう。すぐに襲われない距離をとったうえで、大声を出して脅かす、大きな音を出して追い払いをします。
※ただし、サルの人馴れ度合いや個体によって(若いオスなど)は威嚇後、攻撃してくる場合があります。目線を合わせず、しかしサルからは目をそらさないように後ずさりしながら距離をとりましょう。
サルを寄せ付けないための環境整備
サル対策のための環境整備としては、まず、「なぜ、その場所にサルがくるようになったか?」その直接的な原因を把握して、取り除くことです。主に農作物や果樹、捨てられた作物残渣等、サルの餌となり得るものを除去する、もしくはサルが取れないようにサルに有効な柵を設置する必要があります。
そして次の段階として、サルが集落自体に侵入できないようにサル用の防護柵を設置する、緩衝帯整備などを行うことが効果的です。サルは登ることが得意なため、簡易的な柵では簡単に乗り越えてしまいます。
また、雑草が生えてヤブになってしまった場所では、サルは身を隠しながら出没することができてしまいます。
これらの対策を集落全体で行い、サルを寄付けない地域づくりを進める必要があります。
防護柵の設置
サルを効果的に追い払うためには、防護柵の設置が重要です。防護柵の設置はサルが侵入するのを防ぐために有効な手段です。
サルは運動能力が高く、木登りが得意なため、ワイヤーメッシュなどの柵は簡単に越えてしまいます。そこで、心理的に「痛い柵だ」と思わせる電気柵などと複合した柵を選ぶことが大切です。
また、サルは跳躍力もあるため、柵の近くにサルの足場となる木などの場所がある場合は、そこから柵を飛び越えて侵入する可能性があります。そのため、サルの跳躍力を考慮に入れて柵を設置する必要があります。
当店ではサル対策用の防護柵として「おじろ用心棒」、「ビリビリイノシッシ」の設置を推奨しています。
その他、効果的な対策としては餌となる作物が見えないようにトタンや目隠し用ネットを張るなども有効です。
補助金の活用
自治体によってはサル対策に補助金を利用できる場合があり、これを活用する事で対策費用を軽減することができます。これらの補助金は、サル被害の深刻度や地域の状況に応じて異なる条件で支給されています。
具体的な条件については自治体により異なるため、まずは最寄りの自治体担当課に問い合わせしてみましょう。対策への取り組み支援に関する大まかな流れについては、以下資料を参照してください。
参考:農林水産省「鳥獣被害を防止する取組を支援します~ 鳥獣被害防止総合対策交付金 ~」
サル対策の長期的な視点と重要性
サル対策は長期的に見ることが非常に重要です。サルは非常に学習能力が高い生き物であり、短期的な対策では効果が薄い場合があります。
そのため、一度追い払われた場所にはしばらく戻ってきませんが、そこに餌となるものがあればまた時間を置いて出没します。
また、一種類の対策ではサルが馴れてしまう、もしくは学習して回避する可能性があるため、同時に複数の対策を実施することで、集落がサルにとって安全できない場所にする必要があります。
<例>
- 農地:野菜くずや収穫残渣はそのままにしないで土に埋める、収穫残しがないようすべて収穫する
- キャンプ場:生ごみはきちんと捨てるか持ち帰る
- 墓地:お供え物はできるだけ持ち帰る
参考となる研究など
以下は、公的機関が発行した猿被害対策に関する情報の紹介です。
この研究は、放棄された柿を地域住民と地域外の方と共に除去するイベントを社会実験として実施し、その効果と課題を評価分析したものである。この実験を通じて、猿害を観光資源として地域活性化や多様な人々の参加を促進する猿被害対策手法の可能性を示唆している。
この研究は、放棄された柿を地域住民と地域外の方と共に除去するイベントを社会実験として実施し、その効果と課題を評価分析したものである。この実験を通じて、猿害を観光資源として地域活性化や多様な人々の参加を促進する猿被害対策手法の可能性を示唆している。
この論文は、サルによる農作物の被害を軽減するために実施されてきた様々な方法とその効果について紹介している。例えば、モンキードッグ、ニワトリ、七面鳥を使った追い払い、爆音機や感応式強煙火システムの利用、ラジオの音、案山子やマネキンの配置などがあり、これらの多くは持続性がないこと、その中で、犬を用いた追い払いに関しては条件を整えることで効果が持続すると紹介されている。その他、電気柵やワイヤーメッシュ柵など、各種防除柵の効果についても言及している。
出典:猿害対策におけるサル追い払い支援システムの運用と課題 100161
この研究は、野生動物(特にニホンザル)による人々や農作物への被害に焦点を当てており、2003年以降活動している猿被害対策の市民団体「サルどこネット」の13年以上の活動を通じて、サル追い払い支援システムの運用とその課題について検討している。
「サルどこネット」導入事例:越前市「『サルどこネット』でサルの出没情報を発信/共有」
出典:獣害対策の継続が集落のソーシャル・キャピタルに及ぼす効果
この論文は、集落全体での獣害対策がその集落の社会的結合性(SC)の指標にどのような影響を与えるかを検証し、集落全体での獣害対策の継続と集落の力との関係について考察している。結論として、継続的な獣害対策が集落の力を向上させうる可能性を示している。
これらの研究は、サル被害対策における異なる側面と戦術を考慮しており、公的機関がどのようにこの問題に対処しているか、理解を深めるのに役立つかと思いますので、参考にしてみてください。
まとめ
サル対策を行う上で以下ポイントを再確認しましょう。
- サルの生態を理解する
- 環境整備をしてサルを寄せ付けないよう対策する
- 法的制限を意識して追い払いや捕獲を実施する
- 補助金を活用する
- サルとの共生を目指す
まず、サルの生態を理解することが重要です。サルの習性、食性や行動パターン、コミュニケーションや威嚇方法を知ることで、効果的な対策ができます。
サル被害は進行すると深刻な影響を及ぼします。サル被害が進行してしまう前に、適切な対策を行いましょう。
サル対策のためには環境整備が重要です。防護柵の設置や身を隠せる場所の除去、餌場になっている場所の特定と対策を行い、サルを寄せ付けない対策をしましょう。
また、追い払い方法も重要です。追い払い道具の種類やその効果、追い払い方法やポイントを押さえて、サルを効果的に追い払いをしましょう。
なお、サル対策を行う際には法的な制限も意識してください。追い払い時の制限や捕獲については特に注意が必要です。
また、追い払い対策は「徹底して、継続的に、協力して」がポイントです。サル対策には長期戦になることも忘れずに考えてください。
さらに、補助金を活用することも一つの手段です。サル対策に利用可能な補助金の種類やその活用方法を調べてみましょう。
最後に、サルとの共生を目指した持続可能な対策を行うことで、サル被害を軽減し、より快適な生活環境を作ることができます。ぜひ、この記事を参考にしてみてください。
この記事を書いた人
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