【ぶどう園の獣害対策】実践的な方法とおすすめ商品(ハクビシン対策の事例も紹介)
投稿日:2023年11月15日
運営会社:株式会社 地域環境計画
投稿日 : 2020年06月09日
更新日 : 2024年04月22日
目次
こんにちは「鳥獣被害対策.com」の井上です。
今回のブログでは、ハクビシン、アライグマ、タヌキ、アナグマなどの中型獣対策用『楽落くん』の設置方法やコツ、注意点などについて、お話ししたいと思います。
今回、設置対象となった場所は、新潟県南魚沼市のスイカ畑です。実は新潟県、スイカの名産地で生産量は全国第5位、さらに1世帯当たりの消費量は日本一だそうです!
なかでも、南魚沼市のスイカは、「八色スイカ」として、皆さんに親しまれています。しかし近年になって、この「八色スイカ」がピンチ!だというのです。
その原因は『ハクビシン』。
被害が発生する前にということで、南魚沼市さんからの要望を受け、設置実習を行いました。ちなみに、柵を設置したのは、2019年の初夏だったのですが、行政担当者の方のお話によると、設置してから収穫が終わるまで、ハクビシンの被害は出なかったそうです!よかったです!
楽落くん設置作業の参加者は、南魚沼市と新潟県地域振興局の担当の方、農家さん、そして鳥獣被害対策.comの井上です。
設置の前に、『楽落くん』の特徴について。まずは、論より証拠。『楽落くん』の効果検証動画をご覧ください。
『楽落くん』は、地上から33cmまでを高密度ポリエチレン製ネット、その上に電気線を通した複合型の電気柵です。
この『楽落くん』は、アライグマやハクビシンなどの中型獣対策に尽力されている古谷益朗さん(元・埼玉県農業技術研究センター 生産環境・安全管理研究担当 鳥獣害防除研究チーム)方々が考案されました。
この『楽落くん』は、「登る」のが得意なアライグマやハクビシン、「掘る」のが得意なタヌキやアナグマの両タイプに対して、絶妙な高さの柵で感電するよう誘導設計されています。
動物は、普段通っている場所に何か障害物ができると、危険なものかを確認するために「探査行動」を行います。この特有の「探査行動」を逆手に取ったものが複合電気柵の『楽落くん』です。
ちなみに、このネット+電気柵の高さは、様々な高さで実験をして、最適な高さを導いたとのこと。
また、『楽落くん』は、短時間で簡単に設置でき、柵の高さが低いので人間は畑にまたいで入ることができるという優れモノ。収穫が終わった後の片付けも簡単です。
すべての柵設置に基本的な作業となりますが、柵を設置する予定の場所の除草を行います。
また、凸凹があった場合は、それを無くして平となるようにしてください。ネット柵・金属柵といった侵入防止柵の設置の鉄則は、地際の対策です!
私たち人間は、地上約150cmから地面を見下ろしますが、アライグマやハクビシンの目線は地上から10cm程度、特にハクビシンは低くなります。動物たちから見える世界は全く違います!そのため、獣害対策は動物目線で、自分が動物になった気持ちで進めていきましょう。
作業を合理的に進める方法の一つとして、支柱に目印を付けることをお薦めします。
この目印は、
をあらかじめ、決めておくためのものです。
この作業を実施しておくと、以降の作業が合理化でき、なによりも打ち込む高さが揃えられるので、美しい仕上がりになります。ちなみに、支柱の打ち込み深さは、通常20~25cmですが、畑ごとに土の硬さが違うと思います。
そのため、まずは1本しっかりと固定できる深さまで差し込み、その深さを基準として目印を付けることをお薦めします。
目印を付けた位置にフックを取り付けます。フックは、支柱を打ち込んだ後のセットでも問題ありません。ただし、地面が硬い場所では、支柱を直接ハンマーでたたくと、先端部がつぶれてしまい、フックの取付が難しくなる場合があるので注意が必要です。
柵の設置ラインに沿って、支柱を置いていきます。支柱の間隔は約2mです。
ちなみに、一般的な電気柵の支柱感覚は4mと異なるので気を付けてくださいね。
柵の設置予定ラインに沿ってトリカルネットを広げていきます。ネットを広げる際は、ネットの真ん中に3本程度の支柱を差し込み、これを引き延ばすようにすると簡単に広げることができます。
この際、ネットの端が腕に触れて、傷となることがあります。そのため、長そで、軍手を着用して作業をしてください。
また、ここで重要なのがネットの向き(裏表)です。トリカルネットは、ロールの内側に向かってまるまる性質があります。そのため、柵の外側、つまり動物が侵入してくる側にネットの内側がくる(ネットの反りが柵の外側を向く)ように設置します。
ネットには、下図のように支柱を差し込みます。このとき、ネットの上端・下端は、畑の外側を向いていることを確認してください。ネットの端が外側を向くことで、忍び返し的な効果となります。
支柱の打ち込みは、ゴム製のハンマーを使うと支柱の保護にもなるのでお勧めです。
コーナー部分は、テンションがかかるので、支柱をやや外側に反らせるようにして、必要に応じて2本を近接させて設置し、強度を保たせるようにします。
また、ネットのつなぎ目は、下図のように、ネットとネットを重ね合わせて支柱で固定していきます。 結束バンドを使用して固定しても、問題ありません。しっかりと固定するようにして下さい。
電気柵ワイヤーをフックに結びつけます。ワイヤーの結び方は、特に決まった結び方はありませんが、ひと結びが一般的で、余った部分はしっかりとワイヤーにからませます。また、余ったワイヤーはライターなどであぶり、金属部分のみとすると、ワイヤーにしっかりと絡ませることができます。なお、この余った部分に隙間などができると、そこがショートして、電気が流れるたびに“パチン”とショート音が発生します。
支柱(クリップ)とワイヤーが固定できたら、柵の設置予定ラインに沿って電気柵ワイヤーを伸ばしていきます。ネットと同様に、ワイヤーの芯に支柱を差し込み、伸ばしていくのが楽ちんでお勧めです。
電気柵ワイヤーの準備ができたら、フックにワイヤーを通します。ワイヤーは、フックの穴に通すのではなく、フックの左側は上から、右側は下からワイヤーを挟み込むように入れると簡単にセットできます。
ここまでできたら、ワイヤー高の調節です。ネットと電気柵ワイヤーの間は5cmとしてください。隙間が5cmよりも広くなると、そこから動物に潜り込まれてしまいます。
結束バンドでネットとワイヤーを固定していきます。結束バンドは1スパン(1支柱間)あたり、3箇所程度(約50cm間隔)を目安とし、ネットと電気柵ワイヤーとの距離は約5cmが保たれるように、固定してください。
最後は地面とネットの間に隙間はないか、またネットと電気柵ワイヤーの間隔が5cmで保てているかをチェックします。
地際部分については、土寄せを行うとさらに効果が見込めます。土寄せする場合、まずは畑側から外側に向けて土寄せし、その次に外側から畑側に軽く土寄せを行います。最初に、外側から畑側に土寄せをしてしまうと、ネットが反り返ってしまい、そこに隙間ができてしまう可能性があります。
どうしても隙間ができそうな場所などでは、U字ピンやアンカーでネットの裾部を固定したり、必要に応じてネットの裾部にポールを通して、その上からU字ピンで押さえるなどの対策を図りましょう。
最後に、見やすい場所に危険表示板を設置し、電気柵本器と接続させれば、中型獣対策用『楽落くん』の設置は完了です。
今回は畑外周約140mの施工でした。作業途中、各々が別作業をしながらの作業でしたので、全体をならすと3名×約3時間程度での設置作業となりました。
最後に、『楽落くん』設置の注意事項をまとめたので、参考にしていただければと思います。
電気柵は痛みを学習してはじめて効果がでるものです。そのため、初めて出現した障害物(電気柵)を見た動物が、それが安全なものなのか、否かを探査する時に、いかに感電させられるかがポイントとなります。
電池切れに注意!収穫終了後も、柵を片付ける日まで24時間通電!動物が探査したときに感電しないと、「電気柵だ」と認識しなくなる場合があります。そのため、設置当日に必ず通電してください。たとえ、設置途中だとしても、現場を離れる際は、通電させるようにして下さい。これは鉄則です!
「収穫物がないから」といって通電していないと、柵に慣れて次作や翌年作で柵の効果がなくなる場合があります。もし、通電しない場合は、必ず電気柵ワイヤーを外して下さい。電気の流れない電気柵は、単なるヒモです!ヒモは怖くないですよね?
動物は明け方や夕方でも動きます。スイッチを「夜間のみ」にすると、朝方・夕方など、動物の侵入時に通電していない場合があるので24時間通電しましょう。電池切れに注意!切れてからでは遅い、定期的に電池は交換をしましょう!
電気柵ワイヤーに雑草が当たっていると、漏電して電気が弱かったり、電気が通っていない場合があり、電気柵の効果がなくなります。栽培しているスイカやカボチャなどのツルや葉も、電気柵ワイヤーに当たっている場合があるので注意してください。地面との隙間は注意が必要です。隙間が広がっているところは狙われています。
注意点は以上となります。
八色スイカは7月下旬から8月上旬に収穫の最盛期を迎えます。今年はハクビシンの被害に頭を悩ませないよう、収穫前の準備段階から「楽落くん」を設置して対策を万全にしておきましょう!
これで、甘くておいしい八色スイカがたくさん収穫できますよー。
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