野生動物の利活用レポート①~皮から革へ~
投稿日 : 2013年11月29日
更新日 : 2024年03月21日
こんにちは、地域環境計画北海道支社の久野です。
※株式会社地域環境計画は「鳥獣被害対策.com」の運営会社です。
今年もついに狩猟シーズンがスタートしました!
罠の準備は御済みでしょうか?
皆さんは捕獲したシカ、イノシシをどのように活用していますか?
食肉としての活用はもちろんですが、皮の有効利用についても興味があるのではないでしょうか?
今回の鳥獣被害対策の知恵袋では、動物資源のひとつ「皮革」の利用についてお話します。
捕獲した動物の「皮」が、どのように「革」へと変貌を遂げるか、その過程についてご説明します。
そもそも、さきほどから皮と革という漢字を両方使っていますが、どう違うのか簡単にご説明しますと、「皮」とは動物の表面についている状態、もしくは剥がされたあとの未加工の状態を指し、これは原皮(げんぴ)とも呼びます。
対して「革」は腐敗しないように加工された状態の皮のことを指し、その加工を「なめし」または「皮なめし」といいます。
つまりなめしという工程を経て「皮」は「革」となります。
革はふつう皮革工場でタンニンやクロムなどを使った工業的ななめしによって生産されていますが、家庭にあるものや簡単に手に入るものを使って自宅で皮なめしをすることも可能です。
ただやり方はわかっていても、普段の生活で素材(原皮)を得ることは難しいでしょう。
方法としては
- 猟師さんから皮をいただく
- 自分で捕獲して皮を得る
- 山を歩き回って見つける
- ロードキル個体を回収する
などが考えられます。
私の場合、もっぱら①と④の方法によって皮なめしのチャンスを得ました。
ちなみに私の皮なめし初体験は夜の山道で拾ったタヌキでした。
では私のタヌキ皮なめし体験に沿ってなめしの工程をご説明していきましょう。
皮剥ぎ作業
まずブルーシート(周辺が汚れるのを防ぐため)とナイフ(片刃)とごみ袋とバケツ(いらないところをそぎ落とし捨てるため)、ゴム手袋を用意し皮剥ぎ作業にとりかかります。
このとき室内だとにおいがこもるので、ベランダか庭で作業します。
なお、剥ぐときは マダニに気をつけます。
タヌキは腹から図のように皮を剥ぎました。↓
点線の通りに皮を切り、皮と肉の間に手を入れると、思っていたより力をいれずに皮と肉が分離します。
感触的にはグレープフルーツの皮をむくときの感じです。
ちなみにイノシシの皮を剥いだこともありますが、イノシシは皮と肉の間に厚い脂がくっついていて、皮を剥がすのは重労働でした。
尾と顔は剥ぐのが難しいので四肢と胴体だけ皮を剥ぎました。
脂肪の削ぎ落とし
次は脂肪の削ぎ落としです。
タヌキは脂が少ないとはいえ、剥いだ皮には脂がついています。
これが不要なので丹念に剥いでいきます。
このとき、刃をたてすぎると皮に穴が空くので気をつけましょう。
上の写真をみておわかりのようにすでに数か所穴が空いています。
またこのとき、脂のせいですぐにナイフの切れ味が悪くなり、イライラして作業が荒くなりがちです。
穴を空けないためにも落ちついた着実な作業が肝心です。
脂肪が残っていると皮が腐敗する原因になるので、この脂肪の削ぎ落としの工程は時間をかけて丁寧に行います。
納得できるまで少しずつやりつづけ、タヌキ皮はここまできれいになりました。
この時点でかなりの達成感が得られます。
そのあとは余分な脂と汚れを取り除くために中性洗剤を溶かした水に一昼夜つけておきます。
次に皮を流水ですすぎ、水、塩、ミョウバンを100:5:5くらいの割合で混ぜた液体に浸します。
割合は目安なので、おおまかな分量でも問題はありません。
たまに液をかきまぜつつ、3~4日ほど浸しておきます。
この他に皮に直接塩とミョウバンをまんべんなく塗り込む方法もあります。
乾燥
次に皮の水分をきったあと、平らな場所に置いて新聞紙で挟み、さらに水分を取ります。
まめに新聞紙を交換し、半乾きになったと感じたら縦横に引っ張ったり、揉みこんだりして皮を伸ばします。
このとき皮が乾きすぎてしまうと、固くなり伸ばせません。
十分に伸びた部分は色が白く変わるので全体が白くなるまで伸ばします。
手足や胴体のへりの部分はどうしても伸ばしが甘くなってしまいがちなので注意します。
伸ばしが不十分なうちに皮が乾いてきたら、また水に浸けて湿らせます。
皮全体が伸びきり、白く柔らかくなったら完全に乾燥させて完成です。
上の写真の白っぽくなっている部分が伸びた部分です。
そして伸ばしを繰り返し、完成したタヌキ革がこれです!
...といいたいところですが、実はこのタヌキ皮を外で乾燥中、目を離したすきに野良犬がくわえて
持って行ってしまいました。
新聞紙で皮を挟み、上にベニヤ板を置き、さらにそのうえにブルーシートをかぶせて石まで置いていたのに、野良犬は持って行ってしまいました。
私は野生の力と執着心をあなどっていたようです。
以前から野良犬は周辺でみかけていただけに、完全に注意不足でした。
こうして完成を見ずに私の皮なめし初チャレンジは終了したのでした…。
ちなみにタヌキではありませんが、皮なめしのプロのてほどきのもとなめしたシカの革はこのようになります。
柔らかく、強く、そしてきれいに仕上がっています。
手芸は苦手なので粗末ですが、このシカ革でしおりを作ってみました。
私はまだまだ皮なめしの初心者ですが、皮なめしはただ単に革が得られる喜びだけでなく、先人の培ってきた知恵や、動物の体の仕組みの知識など様々なことを、体験を通して学ぶことができます。
革がきれいになめせたらとても感動しますし、そこから二次加工する楽しみもあります。
以上のように作業は少々大変で時間はかかりますが、野生動物を捕獲された方は、ぜひ一度皮なめしにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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