シカのくくり罠猟に同行! (自動撮影カメラ“Browningプラチナムシリーズ”の性能テスト)
投稿日:2017年3月1日
運営会社:株式会社 地域環境計画
投稿日 : 2017年08月10日
更新日 : 2024年07月31日
こんにちは、鳥獣被害対策.comの久野です。
今回の鳥獣被害対策の知恵袋は、今年2月にくくり罠でシカを捕獲した際のお話しです。
私は趣味で狩猟を行っており、昨シーズン(平成28年度)は、福岡県で第二種銃猟(空気銃)とわな猟で狩猟者登録をしておりました。
福岡県の猟期は、以下のとおりとなっています。
私は、猟期中は、主に空気銃で鳥を、くくりわなでシカ・イノシシを狙っていました。
空気銃についてはまた別のブログでお話しするとして、くくり罠は、鳥獣被害対策.comで販売されている、「跳ね上げ式くくり罠」をメインに使用しました。
この、「跳ね上げ式くくり罠」は、従来の横開きタイプと異なり設置面に対して、罠が垂直方向に跳ね上がるので、より高い位置で足をくくることが出来るようになっています。
↑動画「跳ね上げ式くくり罠:従来品との比較も検証」
なお、今回使用したくくり罠はワイヤー直径が4mm、外枠の直径が20cmの仕様となっています。
※福岡県ではイノシシ・シカのみ、くくり罠の直径制限12cmが緩和されています。
くくり罠は、シカやイノシシ等の獣道に仕掛け、これらの獲物が気づかずに、その罠を踏み込んだ際に、仕掛けが作動し、文字通り足を「くくる」ことによって捕獲する罠です。
対象となる獲物には、バレないように罠を設置しなくてはならないため、わな猟のなかでも技術が求められる猟法なのです。
さて、そんなわな猟ですが、罠を設置した後は、獲物がかかっているかどうか、こまめに見回りに行く必要があります。
私の場合、最低でも1日1回は見回りをします。
しかし、私は週5日働く会社員です。
平日に見回りを行うことは、まず不可能です。
そこで・・・私のようなサラリーマン猟師(わな猟)がどうしているのかというと・・・「土曜に設置して、日曜に回収する」という方法をとっています。
それはつまり、捕獲のチャンスが土曜から日曜にかけての1晩しかない、ということを意味します…。
↑猟期の基本的スケジュール。
1晩のチャンスに全身全霊をかける!
当然、平日は仕事そっちのけでイメージトレーニング!
足くくり罠は、前述のとおり、獲物に気づかれないように、罠を踏ませる必要があります。
罠を設置して1晩しか経っていない場合は、どんなに上手に罠を設置しても、人間が感知できないレベルの、“人の汗や皮脂のニオイ”、さらには罠を設置した位置の“土の質感”の違いなどの異変が残っているものです。
動物はそういった、わずかな異変を感じ取り、罠を見抜き、避けてしまいます。
↑わなの存在に気づき、逃げるシカ
1晩だけで獲物を獲るためには、
の両方が、高い水準で求められるのです。
少々前振りが長くなってしまいましたが、それでは、昨シーズンの猟期における、私のとある休日を振り返ってみましょう。
…2017年2月の中旬頃、春のような温かい日があった翌日に急に冷え込み、ついには雪まで降りだすような気まぐれな天気の日でした。
↑暖かくなって少し動き出したヒキガエルも、うって変わっての降雪には驚きの表情を隠せない模様。
カエル観察を済ませた私は、気温が上昇してベタ雪になった林内の獣道を探して進みます。
林内は積雪の影響で獣道がわかりにくくなっていたため、沢筋を集中的に歩きました。
なぜ、沢筋なのか?
それは・・・沢筋は、水を飲みに来るシカの出現が濃いので、獣道ができ易いのです!
想定どおり、数分たらずの探索で、さっそく獣の気配の濃い獣道を発見することができました。
何度もシカが通っているので、雪がなくなった直線状の獣道を簡単に見て取ることができます。
↑土が露出した画面中央のラインが獣道です。
雪上にも足跡がついていることから、最近利用したことが伺えます。
今回は、この獣道に足くくり罠を設置することに決めました。
まずはくくり罠を設置する位置を決めます。
倒木や落枝、根の露出などがあり、“自然と獣道が狭くなっている場所”があるとよいです。
下の写真の場合だと、雪でわかりにくいですが、獣道に沿って落ちている木の枝等をそのまま利用します。
↑わなを仮置きして設置位置を決めます。
枝や根等、障害物の位置、足跡の深さなどから、よく足をつけているポイントを見極め、狙います。
まずは罠を設置するための穴掘りです。
不必要な環境改変は、罠を設置してあることがバレる原因になるので、掘り起こす土は最小限に留めます。
また、人の臭いを極力残さないため、ビニール製の手袋などを付けて作業することをお勧めします。
↑掘った穴にわなの外枠を置いてみた様子。
土は埋め戻すときに再利用するので、捨てずにとっておきましょう。
↑内筒やバネ、ワイヤーも設置して位置を確定させます。
次に、ワイヤーを丈夫な木の幹や根元にシャックル等で結び付けます。
獲物が暴れた際に、ゆるまないように、ペンチ等で固く締めます。
↑ワイヤーを結びつけた様子。
結び付けた立木にぐらつきや腐朽がないかをよく確認します。
次に、わなのロックを外し、バネの向きや、わなが作動する荷重等を調整します。
「跳ね上げ式くくり罠」の場合、設置後にバネが横向きに倒れやすいので、ペグや木の枝を使って、地面に固定するとよいでしょう。
荷重は、内筒にかけたワイヤーの位置で調節します。
下の画像のように、浅くかけるほど、少ない荷重で作動させることができます。
しかし、浅すぎると甘い踏み込みでも、罠が作動してしまい、空はじきのリスクも高くなってしまいます。
悩ましいところですが、荷重調節の感覚は、経験を積んで獲得していくほかありません。
↑くくり罠 荷重調整の写真
次に、
等のすべての部品を埋めて隠します。
この時、獣道の設置面と土の高さを揃え、自然な状態に復元します。
また、“土を固めすぎない”のもポイントです。
↑穴を掘った際の土を再利用し、罠を埋める。
最後に落ち葉等でわなの設置位置をカモフラージュします。
さらに、シカやイノシシが跨ぐ太さの枝を置いて、罠の中心を踏むように、誘導することも大切です。
獲物に罠を「踏ませる技術」は、猟師の腕の見せどころです。
各々の猟師さんには、こだわりやコツがあるので、いろんな猟師さんの話しを聞いたり、自分で工夫してみたりして、自分なりのスタイルを見つけていくのも、また狩猟の醍醐味といえるでしょう。
↑設置を終えたくくり罠。
なかなか自然な仕上がりになりました。
あとは全体のチェックをして設置終了です。
このほか、3基のくくり罠を仕掛け、計4基稼働させて土曜の作業は終了です。
そして翌日の日曜日、ダラダラしたい気持ちをグッと堪えて、早起きして現場に向かいます。
くくり罠の見回りは、太陽が昇ってから行いますが、なるべく朝の早いうちに見回りに行く必要があります。
その理由は、もし獲物が捕獲されていた場合、その後の保定、止めさし、搬出、解体などなどの作業に時間がかかるため、早く見回って作業時間を確保するという意味合いもありますが、一番の理由は、捕獲されたことで動物が多大なストレスや苦痛を感じているので、なるべく早く見つけてあげたいからです。
さて、気になるくくり罠猟の結果ですが…
↑なんと…シカが獲れていました。
1晩での捕獲成功です!
ちなみに4基の足くくり罠を設置して1頭の捕獲でした。
捕獲率としては上々ですね。
捕獲した個体ですが、冬毛の茶色が土や落ち葉の色に似ているため、捕獲されているかどうか、遠目では非常にわかりにくいです。
↑10mほど離れた位置から撮影した写真。
どこでシカが獲れているかおわかりでしょうか?
この際、急に近づきすぎると、シカが暴れてしまうため、まずは遠目から双眼鏡等で観察します。
特に、くくりの具合が浅くないか、足がちぎれかけてはいないか、を観察します。
罠が外れてしまうと、捕獲個体の逃亡の恐れがあるだけではなく、体当たりされたりして、自分たちが大ケガをする恐れがあるためです。
今回の場合は、目立った外傷はなく、後ろ脚がしっかりとくくられていました。
やはり跳ね上げ式は、脚の高い位置でくくることができるようです。
捕獲されたのは、十数キロ程度の仔ジカでした。
速やかに止めさししを行い、わなを外して搬出します。
搬出後は、未使用のビニール袋を簡易的なまな板として、
等部位ごとに切り出していきました。
↑まな板(ビニール袋)の上に部位を並べた様子。
冬は、雪が天然の保冷材となって肉を冷ましてくれるのでとても作業がしやすいです。
ちなみに、皮もなめして使うために持って帰りました。
さて、最後に残った残渣(骨や内臓等の非食部位)を適切に処分するのも猟師の義務です。
人目につかない、林の奥に残渣を運び、穴を深く掘って埋設処分します。(実はこの工程が捕獲作業のなかで最も重労働です…。)
埋設を終え、家に戻ったら、肉をさらに細かく切り分け、キッチンペーパーに包んで冷蔵庫で熟成させたり、ジップロックに小分けにする作業が待っています。
さらに皮まで持って帰ってきたら、皮についた余分な肉をそぎ落とし、皮を洗う作業等も加わり、気づけばすぐに日が暮れてしまいます。
シャワーを浴びながら、体にマダニが付着していないかどうか、全身をくまなくチェックをしたら、もう明日の仕事に備えて寝る時間…。
こうして捕獲の喜びを噛みしめながら、サラリーマン猟師の休日は終わっていくのでした。
ちなみに、また別の週の週末で1頭シカを捕獲し、計2頭の捕獲で平成28年度猟期が終了となりました。
振り返ってみると、昨年度は休日に狩猟以外の予定が多く、あまり積極的に出猟できませんでした。
そのため、今年度のはもう少し狩猟に専念して、仔ジカだけでなく、自分の体重(60kg)以上の大物を狙っていきたいですね。
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この記事を書いた人
シカのくくり罠猟に同行! (自動撮影カメラ“Browningプラチナムシリーズ”の性能テスト)
投稿日:2017年3月1日
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