投稿日:2016年1月13日
運営会社:株式会社 地域環境計画
投稿日 : 2017年07月11日
更新日 : 2024年07月31日
こんにちは「鳥獣被害対策.com」です。
今回の鳥獣害対策の知恵袋は、奄美大島で問題となっている外来種「フイリマングース」対策の状況についてのお話です。
目次
奄美大島は、2017年3月に『奄美群島国立公園』として指定された国立公園です。
外来種対策の状況が気になりますね。
今回は、実際にマングースの防除作業に従事されている一般財団法人 自然環境研究センター 奄美大島事務所の松田さんにお会いして、お話をお伺いしました。
松田さんは、かつては東京で営業マンをされていたそうですが、単身、奄美大島に移り住み、“奄美大島らしい仕事”を探した結果、奄美マングースバスターズに参加、一時期は環境省のアクティブレンジャーなども経験されたそうです。
美しい自然がたくさん残る奄美大島で、“奄美大島らしい仕事”=“奄美マングースバスターズ”という発想、松田さんは只者ではなさそうです。
ちなみに、マングースについて、ちょっと詳しい方は“ジャワマングース”なのでは?と思うかもしれませんが、実は最近の研究によって、沖縄や奄美大島に生息するマングースは、別種のフイリマングースであることがわかったそうです。
奄美大島は、鹿児島県(本土)と沖縄県のちょうど中間点付近に位置する島で、面積712k㎡、人口は約68,600人です。
面積で例えると、東京23区が619k㎡なのでそれよりも15%くらい大きいサイズになります。
ちなみに、南国のイメージが強いので、沖縄県に属しているような気がしますが、実は鹿児島県に属しています。
奄美大島というと、思い出す動物は“アマミノクロウサギ”ですよね。
アマミノクロウサギは、奄美大島とすぐ隣の徳之島のだけに生息する、とても希少な生きもので、一時期は生息数が減少してしまいました。
ちなみに、アマミノクロウサギはもっとも原始的なウサギの仲間とされていて、ウサギの特徴である耳が小さいのが特長です。
私も博物館でアマミノクロウサギのはく製を観察したのですが、どちらかというと、大きくて、かわいらしいネズミかな?といった印象を受けました。
このアマミノクロウサギは、なぜ一時期減少していたのでしょうか?
その要因、それが実はフイリマングースなのです。
あれ?
マングースといえば、猛毒をもつ蛇“ハブ”を退治するために、放したのでは?と連想される方も多いと思います。
それでは、なぜハブではなく、アマミノクロウサギが減ってしまったのでしょうか?
そこには悲劇がありました。。
実際に、マングースは、ハブやクマネズミの退治を期待して、1979年に30頭が放されたそうです。
しかし、ハブなどの駆除したい動物は夜に活動するのに対して、マングースは昼間に活動する動物です。
そのため 、マングースは、ハブなどを積極的に食べることはなく、夜行性であるアマミノクロウサギの巣穴にいる幼獣や地面の上に巣を作るアマミヤマシギといった、希少な生きものたちが捕食されていったそうです。
つまり、ハブなどを退治するために、マングースを意図的に持ち込んだのですが、期待していた効果は得られず、もともと奄美大島に生息していた生きものたちがその犠牲になってしまということです。
加えて、アマミノクロウサギをはじめとする在来種は、ハブから身を守るための術以外に、マングースから身を守る術を持っていなかったことも要因の1つであるといわれています。
このような状況を受け、マングースを放した10年後の1989年には地元の自然保護団体等が生態系への影響調査を開始し、1993年から有害鳥獣駆除としての捕獲事業がスタートしたそうです。
さらに、2000年には環境省の本格的な捕獲事業が開始され、外来生物法が施行された2005年には「奄美マングースバスターズ」が結成され活動がスタート、現在は42名の方々が活躍されているそうです。
マングースを減らすために、最も効果的な方法は、わなによる捕獲だそうです。
防除事業を始めた当時は、「カゴわな(箱わな)」を活用していたそうです。
その後、奄美マングースバスターズが本格的な活動を始めると、より広範囲で捕獲を実施するようになり、新たな罠として作業がしやすい「筒わな」が導入されたそうです。
現在では、マングースの生息するほぼすべての場所に罠が設置され、その数は3万個にもなるといいます。
私はこのお話を聞きながら、防除作業には私の想像を超える、とてつもない労力がかかっているということを初めて知りました。
このような継続的な努力の甲斐もあり、2000年頃には約10,000頭が生息していたとされるマングースですが、2012年には300頭以下、2016年には50頭以下にまで減少したと推定されています。
ちなみに、将来予測によると、このままのペースで捕獲が続いた場合、2020年頃にはほぼゼロになると予想されています。
ちなみに、最近ではマングースの個体が減少したために、滅多に捕獲されなくなったそうです。
そのため、生息数が少なくなったマングースがどこに潜んでいるか確認するために、自動撮影カメラなどのモニタリングツールを活用しながら、捕獲を続けているそうです。
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さらに、2008年からは、マングースを効率的に捕獲するために、マングースを探し出す探索犬を導入しているそうです。
ちなみに、この探索犬には2つの役目があるといいます。
1つは文字どおり、マングース自体を探し出す探索犬です。
マングース生体の臭いなどを嗅ぎ分ける能力をもち、主にテリア系犬種が活躍しているそうです。
もう1つは、糞の臭いを嗅ぎ分ける探索犬です。
私は、糞の臭いを嗅ぎ分ける探索犬も、マングースを見つけるのだと思っていたのですが、この探索犬の役割は私の想像と違っていました。
実は、この探索犬は、山野を歩き回り、糞が無いことを確認する=マングースが生息している可能性はかなり低い 、ということを確認するために活躍しているとのことでした。
オドロキです!
現在、奄美大島では、マングースの減少に反比例するように、
などの、希少な生きものの生息が多く確認されるようになったといいます。
しかし・・・奄美大島では、新たな問題も発生しているといいます・・・。
そう、それは人によって捨てられた、あるいは野放しにされた“ノネコ”などの生きものです。
ノネコなどは、林内に設置された自動撮影カメラによって多数が撮影されており、現在では1,000頭以上 が生息しているといいます。
実際、ノネコに捕獲されてしまったアマミノクロウサギも撮影されています。
本来、その場所に生息していない生きものが、人為的あるいは随伴的に入り込み、定着してしまうと、もともとあった地域の自然を取り戻すためには、とても大きな労力が必要となります。
奄美大島のマングース、ノネコは、その典型的な例ではないでしょうか。
松田さんは、奄美大島に生息する希少な生きものたちを守るため、また奄美大島の健全な生態系を取り戻すため、マングースバスターズの皆さんとともに、これからも活動されるとのことでした。
奄美大島の面積は712k㎡、これまでにマングースの完全排除に成功した例は4k㎡以下の小さな島だけとのこと。
奄美大島のように大きな島での完全排除が達成できれば、世界初の快挙となり、今後の外来哺乳類対策の大きな後押しになるでしょう!
松田さん、奄美マングースバスターズの皆さん、頑張ってください!
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【写真引用】
※1:「奄美群島の外来種」
(編集・発行 環境省那覇自然環境事務所)
※2:「環境省ホームページ」
(http://www.env.go.jp/index.html)
※3:「世界でたったひとつの 奄美を守る 奄美大島マングース防除事業」
(発行 環境省那覇自然環境事務所)
この記事を書いた人
投稿日:2016年1月13日
投稿日:2011年12月5日
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