野生動物の専門家による鳥獣害対策のためのブログ。野生動物の生態、観察、忌避、捕獲まで、被害を防ぐために役立つ情報を発信しています。

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福島のイノシシ

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こんにちは「鳥獣被害対策.com」の浅尾です。

私事ながら、私は福島県内陸部の出身です。

福島というと、ちょっと前までは磐梯山や、猪苗代湖、白虎隊、喜多方ラーメンなど、そんなものを思い浮かべる方が多かったんじゃないかと思います。

でも、あの日以来、誰もが真っ先に原発事故のことを思い浮かべるようになってしまいました。

確かに、あの日以来、あらゆることが変わりました。

私の実家のある街は、幸いなことに避難区域には指定されていませんが、24時間屋外で365日間過ごしたとすると、年間5ミリシーベルト以上被ばくしてしまうぐらいの放射線量です。

そんな場所に住み続けていいのか?という人もいるかもしれません。

しかし、そんな場所でも、あるいはもっと線量の高い場所であっても、住み続けている人がいるし、住み続けざるを得ない人もいて、そこには日々の営みがあり、野生動物も生き続けています。

仕事柄、野生鳥獣に関わる仕事をしている方と話をする機会が多いのですが、福島県内でそういったことに携わっている方からは、あれ以来、悲観的なことばかり聞かされます。

今シーズンの福島県内のある市町村の狩猟者登録数は、例年の1/3にも満たないそうです。

実際の狩猟数はまだ明らかになっていませんが、おそらく史上最低を大幅に更新するのは間違いないと思われます。

そりゃそうでしょう。

せっかくイノシシなどを捕っても、食べることができなければ、獲物としての魅力はありません。

これは警戒区域などになっていない市町村でのことであり、人が入れない警戒区域の狩猟者数は確実にゼロです。

人が住まなくなり、狩猟者がいなくなり、農作物は放置されたままです。

また、ある方からは、農業被害の実績が無いと、有害鳥獣の対策をするための補助金が下りないので困っているという話を伺いました。

つまり、農業を行っていない県内の一部地域では、対策をとることすらできないのです。

何て馬鹿げた話なんでしょう。

もっと大局的に考えられないものなんでしょうか?

いったい、どうなってしまうのか?

大変なことになっているのではないか?

そう思うと居てもたってもいられず、実際に行ってみることにしました。

行ったのは計画的避難区域に指定されている飯舘村です。

以下、写真と共にお伝えします。

ここは飯舘村の入り口(伊達市と飯舘村の境界)です。

線量計をもって恐る恐る行ってみました。

飯舘村01
ちょっと見にくくて恐縮ですが、毎時5.45マイクロシーベルトと、やはり放射線量は高いです

神社の鳥居が壊れた跡です。

神社鳥居

他に半壊した家屋などもチラホラ見られましたが、シャッターを切るのは躊躇われました。

所々、こうした震災の跡も散見されますが、その他は何も変わっていません。

昔のまんま、素朴でのどかな里山の美しい風景が広がっているだけです。

ただ、人の姿がほとんど見られないことと、線量計の値だけが、この村の現実をあらわしていました。

林の中は総じて線量が高いようでした。

アカマツとコナラの混交林

ここはアカマツとコナラの混交林ですが、毎時7マイクロシーベルトを越えています。

森林に住む動物たちはどうなっているんでしょう?

苔などに覆われた場所は放射線量が高いという予備知識がありましたが、まさかこんなに凄い値とは!

苔

林縁部の苔むした場所の地表付近では毎時16マイクロシーベルトを越えました。

スポンジ状のコケは、多くの放射性物質を吸着してしまっているのでしょう。

小鳥やリスの仲間などは、苔を集めて巣材に使う種類が多いのですが、この村に住む動物や鳥たちは大丈夫なんだろうか?

本当に心配です。

毎時2.67マイクロシーベルトなんて場所もありました。

飯舘村02

16マイクロシーベルトの後だと、大したことないように思ってしまいますが、ここに365日間居続けたら、年間23ミリシーベルトも被ばくすることになります。

イノシシの痕跡をさっそく見つけました。

畑が掘り返された跡です。

イノシシ足跡

雑草が生い茂っていますが、写真奥に見えるトタンの囲いが、かつて畑だったことを物語っています。

道路沿いにも掘り返し跡が見られました。

イノシシ掘り返し

左上方にツツジの植え込みがあるのがおわかりいただけるでしょうか?

ここは人家の庭先で、2車線の道路に面した場所なんです。

こんな所まで!と思わずにはいられませんでした。

カキ畑も、当然ながら放置されたままでした。

カキ畑

収穫されないカキの実は、イノシシ、ニホンザル、ハクビシンなどの動物にとっては大変なごちそうです。

カキ畑の下の地面は、そこら中がイノシシの食痕(掘り返し跡)だらけでした。

イノシシ食跡

ニュースなどでたびたび報道されていたので多くの方がご存じだと思いますが、飯舘村は、飯舘牛と呼ばれる肉牛の産地としても有名なところです。

このため牧草地も多く見られるのですが、その牧草地の近くを通る道路を走っていた時のこと、小雪の舞う中、牧場に群れる数頭の牛の姿が目に入りました。

あれ?牛は全て処分したはずじゃ?と思って車を止めたら、何と牛だと思ったそれは、紛れもないイノシシの姿でした。

イノシシの5頭の群れです。

イノシシ群れ01

始めはじっとこちらを見つめていましたが、カメラを向けると一目散に走って、林の中に逃げて行きました。

イノシシ群れ02

イノシシ群れ03

残念ながら、恐れていたことは既に始まっていることを実感しました。

こんなふうに昼間からイノシシの群れを目にすること自体、異常なことと言えます。

今の飯舘村は、狩猟圧が減り、人が減り、イノシシなどの好む耕作放棄地などの薮が増え、おまけに末収穫の農作物がたくさん残るなど、放射性物質のこと以外は、イノシシにとって住みやすい環境なんでしょう。

今シーズンは、餌不足を招く冬の間の食べ物が豊富なので、栄養状態も良好のはずです。

栄養状態が良ければ繁殖率も上がるので、これからがますます心配です。

本当に早急に手を打つ必要があります。

イノシシには市町村界も県境も関係ありません。

これからますます勢力を拡大する恐れがあり、隣接する県を始め、周辺部にも影響が及ぶ可能性があります。

放射性物質による野生鳥獣への影響も不気味です。

今、何が必要なのか?

何をなすべきなのか?

もっと大局的に考えていく必要があります。

私たちも悲観してばかりはいられません。

何とかするために働きかけていきたいと思っています。

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この記事を書いた人

浅尾 勝彦

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