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サルとシカの被害対策はなぜ難しいか?その2~獣たちが近づきにくい集落をつくる~

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こんにちは「鳥獣被害対策.com」の小野です。

今日の鳥獣害対策の知恵袋は、前回の「サルとシカの対策はなぜ難しいか?その1~防護柵を設置する~」に引き続き、鳥獣害対策に関する研究会の参加報告第3弾です。

前回お話しましたとおり、集落での被害対策は、大きく次の3つに分けられます。

  1. フェンスや電気柵などの防護柵を設置する
  2. 獣たちが近づきにくい集落をつくる
  3. 人や集落に馴れた個体や増えすぎた動物の捕獲を行う

農作物被害を軽減するには、まず獣たちの標的になっている田畑を防護柵で囲う必要があります。

そのため、前回は①についてお伝えしました。

獣たちが集落にやってくるのは、多くの場合、田畑の作物のみが要因ではありません。

そのため被害を軽減するには、田畑以外の場所にも目を向けることが大切です。

今回は「②獣たちが近づきにくい集落をつくる」についてお話します。

「獣たちが近づきにくい集落」とは、つまり「獣たちにとって魅力のない集落」です。

獣たちから見ると、対策をしていない集落には、

  • ア.農作物以外のたくさんの食べ物
  • イ.身を隠せる場所

があります。

「ア.農作物以外のたくさんの食べ物」は、例えば以下のものです。

  • 田畑に残されている作物(収穫しない野菜、被害をうけた野菜など)
  • 田畑の周辺に捨てられた作物(規格に合わないなどのため)
  • 稲刈り後の二番穂
  • カキ、クリ、クワなどの果樹(果樹園や庭先)
  • 農道や林道の雑草

田畑に残されている作物
田畑に残されている作物

二番穂
二番穂

集落の柿の木
集落のカキの木

「イ.身を隠せる場所」は例えば以下のようなところです。

  • 集落の休耕地、休耕田
  • 集落のすぐそばにある藪(手入れのされていない雑木林、竹林)

休耕田
休耕田

雑木林
手入れのされていない雑木林

獣たちにとって魅力のない集落をつくるには、獣たちを引き付けるこれらの要因を一つずつ改善していくことが必要です。

例えば、

  • 収穫しない野菜や果樹はネットで囲んだり、埋設する
  • 稲刈り後の秋に再度田起こしをし、秋~冬の二番穂や雑草が生えるのを防ぐ
  • 農道、林道の雑草は定期的に草刈りをする
  • 休耕地や休耕田は、刈り払いをする、シートで覆う、防護柵で囲うなどを行う
  • 集落のそばの雑木林、竹林は手入れを行う

以上のように書くのは簡単ですが、実際に実行するのは大変です。

私も集落のそばの休耕地の藪の刈り払いを行ったことがありますが、大人や学生の10人で15m×10mの範囲を刈り払うのに半日かかりました。

これらの取り組みを集落の中の個人で行っていくのは大変なことです。

また、できればこのような取り組みは、個人よりも集落でまとまってすると効果が大きいのです。

個人の敷地で徹底した結果、隣の敷地に被害が移るかもしれませんが、集落でやることで、獣にはその集落に来る理由がなくなるからです。

そもそも、林道や農道など、集落の共有地にかかるところもあります。

また、前回説明をした①の防護柵設置についても、

  • 集落で隣接する田畑を囲う
  • 集落と樹林との境界を囲う

方が効率が良い場合があります。

日本獣医生命科学大学などで推奨されている、「集落環境診断」の取り組みは、集落でまとまって対策を行う場合、とても有効な方法です。

次回は、この集落環境診断についてお話します。

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この記事を書いた人

小野 晋

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