投稿日:2014年6月23日
【金属柵】イノシシ用防護柵 設置1年後の状況とメンテナンス方法
投稿日 : 2018年10月03日
更新日 : 2024年03月25日
こんにちは「鳥獣被害対策ドットコム」の井上です。
今回のブログは、イノシシ用防護柵「イノシッシ」の設置1年後の状況、メンテナンス方法についてお話しします。
イノシッシを設置したのは、神奈川県大磯町です。
大磯町といえば、大磯ロングビーチが有名ですが、実は島崎藤村や吉田茂の邸宅があるなど、多くの文化人が暮らしていた地域でもあります。
しかし…こんなゆっくりと時間が流れる大磯町ですが、実はイノシシ被害が発生しているのです。
しかも…頻繁に。
目次
イノシシ被害の状況 大磯町の事例
今回、お伝えするイノシシ被害の発生場所は、丘陵地の麓(ふもと)に位置しています。
やはり、こういった場所は、狙われやすいですよね。
これは(↓)、庭先を無心で掘り続けるイノシシの動画です。
なんとも、腹立たしい。
動画:庭を荒らすイノシシ を自動撮影カメラ(トレイルカメラ)で撮影
また、家庭菜園地にも夜な夜な出現し、見るも無残な感じです。
イノシシ被害対策方法の検討
こんな、イノシシ被害に業を煮やした地主さんが、インターネットで『鳥獣被害対策ドットコム』を見つけ、被害対策の相談をしてきてくれました。
実は、鳥獣被害対策ドットコムの運営会社である(株)地域環境計画は、動植物の生態調査などを中心に、生物多様性保全などを専門とする自然環境コンサルタントで、これまでも数多くの獣害対策業務を手掛けています。
ご連絡をいただいた後は、現地被害の状況を確認し、また対策の方法について打ち合わせを行いました。
打合せでは、イノシシの被害対策には、
- 柵などを使って対象地を守ること
- 被害の原因となる害獣を取り除くこと
について説明させていただきました。
そして、地主さんと私たちとの検討の結果、今回は『柵』による防護を実施することになりました。
また、獣害対策用の『柵』と一言でいっても、電気柵やネット柵、金属柵と様々な種類があります。
さらに、金属柵をとってみても、例えば、高さ、金属線の太さ、潜り込み防止の仕組みなど、検討しなくてはいけないことが沢山あります。
このような打ち合わせを重ね、様々な検討の結果、傾斜地にしっかりと対応でき、柵の下部に『潜り込み防止』の機能を備えたイノシッシ(1.8m)を採用することになりました。
金属柵による対策を実施
ちなみに、金属柵設置は、景観の保全上、柵が目立たないように、敷地境界線上ではなく、少し奥まった樹林内に設置することにしました。
金属柵は、電気柵などと比較すると、コスト的には高くなりますが、頻繁なメンテナンスの必要はありません。
そのため、今回のような敷地の対策としては、最適な対策方法といえます。
ただし、まったくのメンテナンスフリーとしてしまうと、次第に必ず、ほころびが出始め、頭の良いイノシシは、必ずその場所を攻めてきます。
そのため、今回の施工場所については、年に3回、柵の点検を実施し、うち春季・夏季の2回では、柵周辺の下草の刈り払いも行っています。
金属柵設置後のメンテナンス ビフォーアフター
下の写真をご覧ください。
冬季に、落下してきた枝によって、柵が曲がってしまっています。
こういった異常の発生についても、定期的な点検を実施することで、すぐに修復することが可能となります。
金属柵周辺の刈り払いについて
また、柵の周りの枝葉を刈り払い、すっきりさせておくことで、イノシシの侵入を防ぐことができます。
ちなみに、「金属柵周辺の刈り払いは難しいし、刈り払い機での作業は危険なのでは?」と思っている方も多いと思います。
しかし、刈り払い機のブレード部分をチップソー(金属製の歯)ではなく、ナイロン製のコードを使用することで、柵に傷をつけずに、上手に刈り払うことができるそうです。
金属柵のメンテナンス 維持管理の方法
柵の維持管理の方法について、宍倉造園の宍倉さんにアドバイスをもらいました。
メンテナンス作業の工程は大きく4つ。
- ツル取り
- 除草
- 清掃
- (少量の)除草剤散布
①フェンスに絡んだツル取り
- 無理に引っ張るとフェンスを傷めたり、柵の結束部が壊れる恐れがあるため、人力作業で、優しく丁寧にツルを取っています。
- ツルが茂ってしまうと、見通しが悪くなり、イノシシが近づき易くなると想定されるので、3ヶ月に1回を目安にメンテナンスをしています。
②除草
- フェンスの外側2m、敷地側1mを刈幅に実施しています。
- スカート部は、刈払機のナイロンコードでスカート表面に沿って刈ります。
※チップソーは、柵自体を傷つける可能性があるため使用しません。
③フェンス周り、スカート内の清掃
- 常緑樹は春に、落葉樹は秋に、葉を多く落とし、その落ち葉は潜り込み防止用のスカートの中に溜まってしいます。
- スカート部分が落ち葉で埋もれてしまうと、その効果が薄れてしまうため、それをブロワで吹き飛ばします。
- また、同時に地面と柵との間に、隙間ができていないかどうか、確認しています。
施工後1年目の状況、とてもきれいに管理されています。
また、ブロワで枯葉を吹き飛ばすことで、隙間チェックが簡単にできます
- なお、台風の後は、枯れ枝や大きな枝が引っ掛かったりすることが多くみられます。
- そのため、秋の点検は、台風シーズンが終わった頃に実施するのが最適です。
④除草剤散布
- 傾斜地では、植物の根が土壌の流出を防いでいるので、除草剤の散布は必要最低限とします。
- 基本的には、草本類の刈込ができない、スカート部のみの散布とします。
- また、ササ類のような地下茎でつながっている植物が生育している場所には撒かないようにしています。
宍倉さん曰く、基本的には、イノシシに隙をつくらないようにし、フェンスの効力を最小限のメンテナンスで最大限に引き出すようにしているとのこと。
金属フェンスは、電気柵よりもメンテナンスが楽といわれていますが、やはり適切なチェックや補修は必要となりますね。
小さいな“ほころび”が、徐々に大きくなり、そしてイノシシの侵入を許してしまうことに繋がります。
『チェックの目は手抜かりなく!』これは獣害対策の鉄則ですね。
もし、皆さんのお住いに、広域金属柵・ワイヤーメッシュ柵が設置されていたら、地域の方々と協力して、柵の点検を行ってみてください。
地域ぐるみでの獣害対策も大切ですよね。
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