斜面樹林地でイノシシ対策用の金属柵「イノシッシ」を設置するコツとは ?
投稿日 : 2017年03月30日
更新日 : 2024年03月25日
こんにちは「鳥獣被害対策ドットコム」の井上です。
今回の鳥獣被害対策の知恵袋は、斜面樹林地など複雑な地形での、イノシシ対策用の金属柵「イノシッシ」を設置する際に、気を付けておくべき点についてまとめてみました。
施工場所は、神奈川県大磯町です。
目次
神奈川県大磯町でのイノシシ被害の現状
実は最近、この大磯町周辺でのイノシシ害の相談が多くなってきています。
なぜ、大磯町に?
と、私なりに考えてみると、大磯町は緑地の末端にあるから?という疑問が湧きてきました。
つまり、大磯町は丹沢山塊から南東側に伸びる緑地丘陵帯の末端にあり、これ以上南側に行けば相模湾、東側は市街地になっているので、行き止まりになっている?とも、読み取れます(あくまで私的な見解です)。
ちなみに、大磯町と平塚市の境界に位置する場所には、高麗山公園・通称「湘南平」と呼ばれる夜景スポットがありますが、先日、もしや?と思い、調査に出かけたところ・・・。
至る所に、イノシシの掘り返し跡や、糞がみられました。
売店の方に話を聞いたところ、「イノシシは、昔からいたけど、ここ数年で急に見かけることが多くなった。日中も道路脇とかで見かけることがある」とのこと…。
ちなみに、今回の施工場所でも、自動撮影カメラによるイノシシの出現状況を確認しました。
すると・・・カメラを設置してすぐに、樹林地から出没するイノシシの姿をとらえることができました。
また、菜園にもしばしば現れ、イノシシは好き放題に掘り返していきます。。
動画:大磯町の民家に出現したイノシシ
このような、イノシシの行動にしびれを切らした地主さんから連絡を受け、打合せの結果、イノシシの侵入防止対策として、金属柵を設置するに至りました。
前振りが長くなりましたが、今回は“斜面樹林地で金属柵を設置するコツ”です。
ちなみに、設置した金属柵は「イノシッシ(1.8m)」で、山林と居住地の境界線(山林斜面)に設置しました。
金属柵【イノシッシ】の特徴
- メッキ加工をしているのでサビに強い
- パネルは直径3.2mmの軽量タイプで、杭と支柱パイプが分離型のため、楽に設置ができます
- うりぼうの通り抜けを防ぐため、地上高45cmまでは目合いを7.5cmと狭くしています
- 裾部には、斜めに張り出したスカートパネルがあるので、もぐり防止や飛び越え防止の効果が期待できます
斜面樹林地で金属柵【イノシッシ】を設置するコツ
今回の金属柵「イノシッシ」は、地域で活躍している宍倉造園さんに施工をお任せしました。
宍倉造園の宍倉さんです、今回の施工では様々なコツを教えていただきました。
柵の施工は、工務店さんの方が得意?とも考えたのですが、今回の施工地が斜面樹林地であるため、樹木の剪定作業などが発生することを見込み、造園施工の会社に依頼しました。
造園屋さんは急傾斜地でもしっかり施工してくれます。
1.金属柵設置の位置決め
まず、最初の作業は、金属柵「イノシッシ」設置のための位置決めです。
当然ですが、山林には樹木が多く生育しています。
そのため、金属柵を設置する場合は、樹木の根などをうまく避けながら、かつ、少しでも平坦な場所に設置する必要があります。
現地は、大木があったり、アズマネザサに覆われる場所があるなど、結構大変な場所です邪魔な樹木は根こそぎ伐採してしまったら?という考えもありますが、宍倉造園さんに聞いたところ、「それはダメだ!」とのこと。
なぜか?
というと、「斜面の土壌は樹木の根でしっかりと支えられているので、樹木を伐採してしまうと、降雨時などに土壌が流出、金属柵もろとも流れてしまう危険性がある」と教えてくれました。
納得です。
また、設置を予定する場所は、傾斜が極力緩いところ、凹凸が少ないところを選ぶ必要があります。
なぜか?
というと、急傾斜地や凹凸が多い場所だと、どうしても斜面と金属柵との間に隙間が出来てしまいます。
そして、この小さな隙間を取っ掛かりに、イノシシが隙間を広げ、そこから侵入してしまう可能性があるからです。
2.必要資材数を決める
設置位置が決まったら、どのくらいの金属柵の資材が必要になるか、見積もる必要があります。
水田地帯などの平坦地であれば、地図やグーグルマップなどから、必要となる資材量を計算することができます。
しかし、斜面樹林地だと、小規模な谷や尾根があるために、どうしても隙間が出来て、イノシシが侵入してしまいます。
そのため、この隙間を埋めるために、どうしても多くの資材量が必要になります。
ちなみに、このような状況を考慮すると、想定した設置距離よりも1.3~1.5倍、さらにはそれ以上の資材が必要になる場合があるので、注意が必要です。
3.施工/事前準備
まずは、設置予定地の下草・樹木の剪定です。
金属柵「イノシッシ」を設置する場所に沿って、幅約2mの範囲の下草を除去し、樹木から張り出している枝などを選定していきます。
4.施工/金属柵「イノシッシ」の設置
整地が完了したら、フェンスを運び込み、設置を開始します。
①資材を並べる
金属柵の設置は、起点からきっちりと設置するのではなく、まずは設置の目安となるように、金属柵を並べていきます。
これで、ある程度の設置資材量を勘案し、本施工を行います。
②杭の設置
杭パイプを地中に40~50㎝程度打ち込み、杭パイプに支柱パイプを差し込みます。
あらかじめ、差し込む深さの目安を書いておくと、作業がはかどります。
杭パイプを打ち込む際は、資材に同梱されている打込用ボルトを活用してください。
ハンマーなどで直接杭パイプを打ち込むと、頭の部分が潰れてしまい、支柱パイプが差し込めなくなる可能性があります。
③パネル留め具の設置
支柱パイプの上部に、パネル留め具を差し込み、その上から支柱キャップをはめ込みます。
④本体パネルの取り付けと固定
本体パネルは、支柱パイプの上端にセットしたパネル留め具に引掛け、さらにパネル固定用結束線で固定していきます。
本体パネルをパネル留め具に引掛ける際は、パネルの縦目が田畑などの保護対象地の外側に、横目が田畑側にくるようにセットします。
これは、イノシシが金属柵に噛みついて壊そうとした場合、田畑の外側から横目を引っ張られてしまうと、破損してしまう可能性があるためです。
パネルの固定には、ハッカー(しの)を活用すると簡単に固定することができます。
固定は、支柱パイプ1本につき、上部・下部・中間の3か所を固定します。
パネルを固定する時は、本体パネルと支柱とをたすき掛けの要領で締め上げると、しっかりと固定できます。
傾斜地などの接合部分は、必要に応じて切り貼りするなど、隙間を作らぬようにしっかりと張り合わせてください。
⑤スカ―トパネルの設置
スカートパネルのフックを本体パネルに取り付けます。
しっかりと取り付けたら、スカートパネルの端に持ち上げ防止のプためのラアンカーを打ち込みます。
最後に、本体パネルにスカートパネルがしっかりと引っ掛かっているか確認し、緩いような場所は、ペンチなどを利用してU字になっているワイヤーを締め上げます。
また、人が出入りする場所には門扉を設置します。
⑥完了チェック
パネルの設置が完了したら、隙間、特に潜り込まれてしまうような場所はないかチェックします。
しっかりと接合できているが、少しだけ隙間ができてしまっています。
もし、イノシシに潜り込まれる可能性がある複雑な地形の場所があったら、地形に合わせて余った金属柵を加工したり、プラアンカーを多めに打設するなどの対応を図ります。
こうすることで、イノシシ対策がより強固なものになります。
隙間を埋めるように、パネルを加工設置します。
隙間ができやすい場所には、あらかじめ、プラアンカーを多めに設置します(打ち込み前)。
これで、イノシシ侵入防止対策の金属柵「イノシッシ」の設置は完了です。
まとめ
◆金属柵「イノシッシ」設置の位置決め
・凸凹な場所は避け、少しでも平坦な場所を選ぶ
◆金属柵「イノシッシ」資材の見積もり
・凹凸地であることを考慮し、資材量は想定よりも多めにする(1.3~1.5倍程度)
◆施工/事前準備
・あらかじめ、約2mの幅で除草を行う
・斜面樹木は伐採せず、枝選定に留める
◆施工/金属柵「イノシッシ」の設置
・本体パネルの表裏に注意!
・パネルの接合部は隙間なくしっかりと!
・スカートネットの裾部は、潜り込まれないようにプラアンカーをしっかり打設!
◆完了チェック
・隙間、特にイノシシやシカが潜り込みそうな場所がないかしっかりとチェック
・複雑な地形の場所などは、地形に合わせて金属柵を加工、またプラアンカーを多めに打設
斜面地での施工は、平坦地と比較して、数倍も手間がかかるといいます。
誰でも簡単に施工ができるのが“売り”のイノシッシですが、斜面地での作業は危険が伴います。
そのため、造園施工などの専門家にお頼みするのも一つの手段かと思いますので、ご一考ください。
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