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イノシシ対策用の電気柵設置体験「ふるさと体験ツアー」に参加!

イノシシ対策用の電気柵設置体験「ふるさと体験ツアー」に参加

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こんにちは、鳥獣被害対策ドットコムの井上です。

今年の3月に、ふるさと体験ツアー『益子の山』~美しき益子の里山を守り育てるを知る~に参加してきました!

ふるさと体験ツアー『益子の山』~美しき益子の里山を守り育てるを知る~

ふるさと体験ツアーの様子
画像:ふるさと体験ツアーの様子

今回のツアーの目玉は、なんと電気柵の設置体験!

今までに、電気柵の設置体験ツアーがあっただろうか??
なんともスゴイ企画をするツアー会社があったものだ!と、驚いてしまいました。

目的地である栃木県益子町は、栃木県の南東部に位置する町で、陶器の益子焼が有名ですよね。

そんな益子町ですが、実は陶器以外にも有名になりつつあるものがあるのです。

それが・・・イノシシです。

トレイルカメラに映る複数のイノシシ
画像:トレイルカメラに映る複数のイノシシ

(写真引用:文末に引用先を示しています)

益子町でも、特に西明寺地区におけるイノシシ被害が大きく、10年くらい前から被害が目立つようになったそうです。

一部の農家さんは、収穫が全く見込めない状況になったこともあったということ。

みなさんは、そんな大変な場所で、なぜ『獣害対策ツアー?』と思われるでしょう。

実は西明寺地区、平成26年度から2年間にわたり、栃木県が創設した「獣害に強い集落づくり推進事業」を導入し、イノシシに強い集落に生まれ変わったのです!

取組の詳細は、以下のブログ↓

栃木県益子町のイノシシ被害対策の取組 前編/西明寺地区2年間の取り組み
栃木県益子町のイノシシ被害対策の取組(西明寺地区を例として)後編/現地視察

ツアーの話に戻りまして…

今回のツアー内容は盛りだくさんです。

  • 午前:オリエンテーション&現地散策
  • 午後:里山整備体験(電気柵の設置)
  • 夕方:「いろり茶屋」でイノシシ鍋を食べながらの交流会・西明寺地区で撮影されたイノシシ動画の鑑賞

ちなみに、このツアーはえにしトラベルさん(栃木県宇都宮市)と栃木県芳賀農業振興事務所さんが共同で開発したツアーです。

~オリエンテーション&現地散策~

オリエンテーション

まずは、公民館で益子の里山について、いろいろとお話を聞きました。

お話をしてくれたのは、西明寺地区農家組合代表の山崎さんと鳥獣管理士の田沢さんです。

『里山ってどういうところ?』というところから教えていただきました。

山崎さんのお話では、里山にあるものは、すべて生活の糧として使える。

落葉樹は、薪・炭・かまどの燃料に、落ち葉は堆肥になる。
竹はタケノコに、草は家畜のえさになる。
里山全部が生活に必要なものだったので、山の上まで、隅々まで人の手が入っていた(管理されていた)、と。

里山風景のイラスト
画像:里山風景のイラスト

この挿絵はツアー参加時に頂戴しました!

かつての里山は、バランスの保たれた生活が続いていましたが、人間の生活が変化・・・燃料は化石燃料に依存するようになり・・・そうすると、里山に人の手が入らなくなってしまうため、荒廃していきます。

里山が荒廃(=ヤブ化)してしまうと・・・

ヤブ化して見通しの悪くなった里山は、イノシシにとっては好都合です。

なぜなら、イノシシの身を隠すのに適した環境となるからです。
特に、ヤブ化した里山と、田畑が隣接したところ、こういった場所がイノシシに狙われやすくなります。

藪に潜むイノシシ
画像:藪に潜むイノシシ

なぜか狙われやすくなるのか?
それは、イノシシが姿をさらすことなく、田畑に入り込むことができるからです。

ちなみに、一般的には、里山の林縁部から田畑まで3mほど刈り払いされていれば、イノシシは侵入しづらくなると言われています。

藪を刈り払う
画像:藪を刈り払う

この写真(下)は、お話を聞いた際にいただいたものです。

イノシシ被害の痕跡
画像:イノシシ被害の痕跡

遠くの方に、ミステリーサークルのようなものが見えるのが分かりますか?

西明寺地区に現れたイノシシは、ヤブ化した里山から出現、すぐに田んぼに入り込み、さらに最も見つかりにくい、田んぼの中央まで入り込んでから稲穂を食べていました。

恐るべし、イノシシの悪知恵・・・

現地散策

公民館でのオリエンテーションの後は、現地散策です。

この谷戸(谷津田)は、農道にそって草刈りが行われ、電気柵もしっかりと設置されています。

電気柵設置の様子
画像:電気柵設置の様子

この場所は、水際の斜面に沿ってしっかりと電気柵が張られています

しかし、田んぼから離れた場所に目を移すと・・・。

あちらこちらに、イノシシのヌタ場がありました。

イノシシのヌタ場
画像:イノシシのヌタ場

そして、このヌタ場のまわりには、しっかりとイノシシ捕獲用の箱わなが設置されていました。

イノシシ捕獲用の箱わな
画像:イノシシ捕獲用の箱わな

このほか、一見すると見落としてしまいそうな塚についてもお話をいただきました。
昔は、この塚を目印に曲がり、山道を登り、峠を越えて、隣町まで行ったそうです。

里山の歴史と塚
画像:里山の歴史と塚

地域の歴史も山崎さんにいろいろと教えてもらいました。

こういった、地域の歴史に触れることができるのも、ふるさと体験ツアーの醍醐味ですね。

~里山整備体験(電気柵の設置)~

午後は、電気柵の設置体験です。

まずは、電気柵の仕組みと構造のレクチャーをしっかりと受けます。

電気柵設置のコツについては、鳥獣被害対策ドットコムのイラストを使っていただきました!(ありがとうございます)

電気柵の仕組みと構造
画像:電気柵の仕組みと構造

設置方法を教えてくれたのは鳥獣管理士の田沢さん、ポスターを持っているのは栃木県芳賀農業振興事務所の山村さんです。

イノシシ対策用電気柵の設置図
画像:イノシシ対策用電気柵の設置図

そのあとは、みんなで実地演習です。

まずは、等間隔に支柱を刺します。
設置の際には、畑地に隣接する斜面の上の方から飛び込まれないように、ちゃんと斜面との距離も考慮に入れて設置します。

斜面と柵の距離
画像:斜面と柵の距離

支柱の設置が完了したら、ワイヤーを通します。
今回は、イノシシ用2段張りの電気柵だったので、竹竿にボビン(ワイヤーを巻き付けているもの)を2つセットします。

ボビンを活用する
画像:ボビンを活用する

これで、いっきに、手早く、簡単にワイヤーを張ることができます!

今回使用した支柱のガイシ(←ワイヤーを引っかけるところのことを言います)は、クイックタイプだったので、セットもらくちんでした。

そして、田畑を1周ぐるっと囲ったら、ワイヤーがわたんでいるところ、交差しているところはないか確認、そして上段と下段のワイヤーをしっかりとつなぎます。

電気柵ワイヤーの結合
画像:電気柵ワイヤーの結合

ここまで準備できたら、あとは本機の登場です。

複数本あるアース棒を1本ずつきちんと離して、しっかりと埋め込んだら、バッテリーを本機に接続します。

電気柵アース棒の設置
画像:電気柵アース棒の設置

アースはそれぞれを離して、しっかりと埋めます。

電気柵本機の電源を入れる
画像:電気柵本機の電源を入れる

この瞬間がドキドキします。

そして、スイッチオン!

といっても、見た目は何も変わらないので、ちゃんと電流検知器で電流が流れているかチェックします。

電流検知器で電圧を計測
画像:電流検知器で電圧を計測

さすがに、自分自身の体を張って電流が流れているかどうか、確認する参加者はいませんでした。

ここで鳥獣管理士の田沢さんから、電気柵の設置後の教訓です。

電気柵を設置したら、

  1. その日から通電させること
  2. 日中でも人があまり立ち入らない場所であれ24時間連続通電すること

これが鉄則です!と念押しをされました。

電気柵は、金属柵などの『物理柵』とは異なり、『心理柵』と呼ばれる柵です。

イノシシは、警戒心が強い動物なので、見慣れないものを発見すると、最初は慎重に行動します。
まずは、鼻先を使ってそれが安全なものなのか、確かめようとします。

しかし、いったん、安全であるということを学習してしまうと、次からは鼻先で詮索することはせず、行動は途端に大胆になります。

ちなみに、イノシシは硬い毛で全身を覆われているため、電気ショックを感じるのは鼻先などの限られた部位となります。

つまり、イノシシが電気柵を最初に発見し、『これは何だろう?』と、鼻を使って詮索した時に電気ショックを受け、『これは危険なものだ!』と思わせることが大切なのです。
つまり、『心理的』に危険なもの、と認識させるのです。

仮に・・・
電気柵を設置した後に、「作付けもまだだし、電気代ももったいないから通電させるのはもう少しできでもいいだろう」なんて考えてい
ると・・・
イノシシは、電気柵が通電していない期間に、初めて見る電気柵を『何だろう?』と鼻で詮索し、問題ないなと学習してしまいます。

イノシシが『電気柵は危険ではない』、と学習してしまうと、もう後の祭りです。

以降は、イノシシは鼻先で詮索することなく、田畑に侵入してきます。
その時、電気柵のワイヤーが触れているのが、硬い毛の部分だけであれば、電気柵の効力は発揮されません。

話しがすご~く、長くなってしまいましたが、電気柵の設置はこの設置直後の対応が重要なのです!

最後は恒例、集合写真です。
今回のツアーは、若い方らベテランの方まで、実に様々な方が参加していました。

なぜ、みんなで物事を達成させると集合写真を撮ってしまうのでしょう。
それは、人間の悲しい性なのかもしれません。。

ふるさと体験ツアー集合写真
画像:ふるさと体験ツアー集合写真

~「いろり茶屋」でイノシシ鍋を食べながらの交流会・西明寺地区で撮影されたイノシシ動画の鑑賞~

「いろり茶屋」でイノシシ鍋を食べながらの交流会

最後はお待ちかねのイノシシ鍋です。

地域で獲れたイノシシ肉と野菜をふんだんに使ったイノシシ鍋です。

イノシシ鍋1
画像:イノシシ鍋1

肉の赤身がとてもきれいで、見た目からそそられてしまいます。

味付けは地元のみそ仕立てで、格別なお味でした。

イノシシ鍋2
画像:イノシシ鍋2

ちなみに、イノシシ肉には旬があります。
12~2月くらいの寒い時期だそうです。
この時期のイノシシは、ドングリなどの高タンパクな木の実をたらふく食べた後で、脂が一番のった時期なのだそうです。

西明寺地区で撮影されたイノシシ動画の鑑賞

また、イノシシ鍋を食べながら、栃木県芳賀農業振興事務所さんから、西明寺地区に出没したイノシシの動画を見せていただきました。
(以下の動画は、栃木県芳賀農業振興事務所さんから提供いただきました)

この動画、どこにイノシシがいるのかわかりますか?

林の中から、瞳だけがギラギラ動いています。
警戒心が強いのですね。


動画:林の中から畑をうかがうイノシシ

十分に警戒し、大丈夫だ問題ない!と思ったら、林から飛び出してきました。しかも、ぞくぞくと・・・何頭いるのだか・・・。


動画:林の中から湧いてくるイノシシ

こうなったら、手が付けられない・・・大胆な行動が目立つようになり・・・。


動画:夜中の農道を群れで歩くイノシシ

イノシシは夜間に活動する、と思い込んでいたら大間違いです。
畑地の脇で採餌する前半の動画は早朝に撮影されたものですが、後半の畑の中を走る動画は、午後2時に撮影されたものです・・・。


動画:イノシシは日中も活動します

論より証拠、百聞は一見に如かず、とはこのこと。
ツアーに参加したみんなが、昼間みていた場所は、夜になるとこんな世界に変貌する。。

この状況を目の当たりにし・・・
自分たちの知っている現場と、そこに現れるイノシシの群れをリンクさせた瞬間・・・
参加者のみんなが、鳥獣被害について真剣に考えた時間だったのかもしれません。

まとめ

最後に、山崎さんから、今回の事業にかける熱い思いをお伺いしました。

「私たちは『先人から受け継いできたこの豊かで美しい地域の環境を次の世代に渡す、そしてこうした想いを受け継いでくれる人を育てていくことが大切である』とし、さらに『この里山とどう関わり合い、どうやって手入れをしていくのか、一番重要なのは“人づくり”なのだ』」と話されていたことが、私の心に残りました。

益子町西明寺地区の取組の詳細は、以下のサイトでも閲覧することができます。
ぜひ、閲覧してください、参考になります!

栃木県HP
http://www.pref.tochigi.lg.jp/d52/kikaku/zyuugai/higaitaisakutop.html

益子町HP
http://www.town.mashiko.tochigi.jp/Page/Page001440.html

※引用:上記に示した栃木県HPおよび益子町HPの掲載資料から引用させていただいています。

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この記事を書いた人

井上 剛

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