豚熱・アフリカ豚熱の脅威から日本の畜産を守る!獣害対策の重要性と最新動向
投稿日:2024年6月10日
運営会社:株式会社 地域環境計画
投稿日 : 2016年03月30日
更新日 : 2024年04月16日
こんにちは、鳥獣被害対策ドットコムの井上です。
先日のブログでは、「栃木県益子町のイノシシ被害対策の取組 前編/西明寺地区2年間の取り組み」について掲載しましたが、今回はこの後編/現地視察編です。
栃木県益子町では、平成26~27年度の2カ年にかけて、イノシシ対策を実施しています。
前回ブログ
栃木県益子町のイノシシ被害対策の取組 前編/西明寺地区2年間の取り組み
主要なイノシシ対策は、電気柵やワイヤーメッシュ柵を使用した、田畑への侵入防止と、藪化した里山林の手入れです(捕獲も進めています)。
今回の現地視察では、鳥獣管理士1級(※)の橋本由利子さんに、柵の設置状況や里山林の手入れなどについて様々なポイントからレクチャーしていただきました。
ちなみに、女性で鳥獣管理士1級を取得しているのは橋本さんだけだそうです!スゴイ!
視察地に到着し、まず驚いたのは、徹底した農地周辺の藪の刈り払いです。
山裾が藪化した里山の景観は、『鬱蒼とした…』という印象が強く残りますが、しっかりと山裾の下草管理が行われている場所は、『すがすがしさ』を感じます。
栃木県周辺の里山は管理が滞ると、ササが繁茂するようになり、藪化が進行していきます。。。
西明寺地区の山裾は、スッキリです。
春になると、さらにきれいになるでしょうね!
林内(山裾)も、下草を刈って見通しヨシ!
“きれいな森だなぁ~”と、そんなことを思いながら山裾を眺めていたら、鳥獣管理士の橋本さんが教えてくれました。
「イノシシは、とても臆病な生きものなので、全身をさらけ出すようなことはしたくないの。
だから、田畑の周囲の藪をしっかりと刈り払っておくことが大切。
この“刈り払いの幅の目安は3m”だよ!」と。
ただし、このきれいな林床を維持するのは大変だろうなぁ…なんて思いつつ、刈り払いのコツについて、地域リーダーの山崎さんに、「どうやって、こんなにきれいに畦や斜面を刈り払うことができるのですか?」と、聞いてみました。
すると、山崎さんは「みんなが近所の様子を気にして刈るもんだから、みんな自然とね、刈り込みの技術が上達していくんだよね~面白いもんだね~」と、教えてくれました。
次に、電気柵の設置の状況のチェックです。
私が“きれいに張れているもんだなぁ~”、なんて感心していたら、すかさず橋本さんが段差部に発生した隙間を見つけ、『危険だわ!』と、チェックが入りました。
この場所は、道路から一段下がったところに水田があり、この道路と水田の間には、小さな水路が流れています。
私は最初、どこのことを指しているのか?と思ったのですが、よく見ると、危険個所はすぐにわかりました。
そう、段差をクリアするためのギャップ部分です。よくみると、この反対側も同じように隙間ができていました。
この写真を見た方は、“イノシシがこの隙間に入り込むためには、車道からジャンプしなくてはいけないので、『そこまでしなくても大丈夫なのでは…?』”と、思うかもしれません。
しかし!
この隙間の手前には、水路が流れており、イノシシは水路を伝いながらやって来て、田畑に侵入してしまう可能性がありました。
ちなみに、この水路の下流側はこんな感じです。
つまり、車道を歩いてきたイノシシは、
このような事態を避けるために、橋本さんは「早急にこの隙間にも1本、柵線を増やして対応しよう!」と、素早い指示が出ます。
さすがは、鳥獣管理士1級の腕前です。
電気柵の設置状況を確認した後は、ワイヤーメッシュ柵の確認です。
ワイヤーメッシュ柵は、田畑と山裾との境界部分に設置されています。
“しっかりと、きれいに張っているなぁ~”(ちゃんと、ワイヤーメッシュの表裏も統一されているし)などと感心していたら…。
またも、橋本さんが教えてくれました。
「実はこの前、このワイヤーメッシュ柵と電気柵の間に、イノシシが入り込んでしまって、ワイヤーメッシュを曲げられてしまったの…」
パッと見は分からなかったのですが、よくよく観察すると、ありました。
確かに、ワイヤーメッシュの裾が曲げられています。
恐るべし、イノシシパワー!
どうやら、何かの拍子に、ワイヤーメッシュ柵と電気柵の間にイノシシが入り込んでしまい…パニックに陥ったイノシシが、ここから脱出したのだろうと…。
それにしても、なぜ、この場所を選んだのでしょうか?
遠目にみると、ちょうどこの場所は、他の場所よりも少しだけ傾斜が緩くなっています。
そのため、足場として踏ん張りが効くので、ここに決めたのでしょうか。
また、ワイヤーメッシュ柵の外側(写真の右側)はきれいに整理されていたのですが、脱出された所には、ちょうど伐採木が迫り出していました。イノシシ目線でみると、この出っ張りはすがりたいものに見えたのでしょうか。
答えは、イノシシに聞かないとわかりませんが、いずれにしてもこの場所は要注意個所として、修理・補強を行うとのことでした。
パッ、と見ただけではわからないところにも、しっかりと気を配ることが必要ですね。
このほか、水路下からの潜り込みを防止するため、こんなところにもしっかりとワイヤーメッシュ柵を設置していました。
今回の視察を通して痛感したのは、日々の地道な、たゆまぬ点検です。
やはり、土地に愛情をもち、見つめ続けることが大切なのですね。
地域リーダーの山崎さんが話されていた「先人から引き継いだ、この豊かで美しい地域の環境を将来の世代により良い姿で残していく」という想いが実現できそうです。
益子町西明寺地区の取組の詳細は、以下のサイトでも閲覧することができます。
ぜひ、閲覧してください、参考になります!
※栃木県では、イノシシによる農業被害を受けている集落において、獣害対策の指導者である鳥獣管理士を配置し、継続的かつ有効な対策を住民自らが主体的に計画・実施することにより、獣害に強い集落づくりをすすめています!
※鳥獣管理士:鳥獣管理士は、鳥獣管理の専門的な教育を受けた方を対象に、一般社団法人鳥獣管理技術協会が資格試験を実施して認定する技術者資格です。
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