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栃木県益子町のイノシシ被害対策の取組 前編/西明寺地区2年間の取り組み

栃木県益子町のイノシシ被害対策の取組 前編/西明寺地区2年間の取り組み

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こんにちは、鳥獣被害対策ドットコムの井上です。

先日、自動撮影カメラ(センサーカメラ)の納品に合わせて、茨城栃木鳥獣被害広域対策協議会が主催する研修会に参加させていただきました。

自動撮影カメラ(センサーカメラ)スペック一覧

参加自治体は、茨城県、栃木県の職員方々をはじめ、益子町はじめ15市町の獣害対策関係職員、鳥獣管理士(※1)、地域で活躍した方々などです。
広域対策というだけあって、大勢の方が参加していました!

今回は、午前中に実施したイノシシ対策の取り組み事例の解説についてお話しします。

イノシシ対策の取り組み事例の解説

お話をしていただいたのは、栃木県県東環境森林事務所環境部環境企画課の岡本さんです。

イノシシ被害研修会
画像:イノシシ被害研修会

益子町西明寺地区は、周囲を広葉樹主体の山林に囲まれた自然豊かな里山集落です。

イノシシ被害に悩む益子町西明寺地区
画像:イノシシ被害に悩む益子町西明寺地区

益子町西明寺地区では、10年ほど前からイノシシによる農業被害が急激に顕在化、一部の農地では全く収穫が見込めなくなるような状況であったそうです。

このような状況に対して、栃木県が創設した「獣害に強い集落づくり推進事業」を導入、西明寺地区・鳥獣管理士・益子町・栃木県が連携して取組を行うことになりました。

主な取組は以下の5つ、これらの取組を平成26~27年度の2ヶ年で実施しています。

  1. 指定鳥獣管理士の配置
  2. 被害状況および加害獣出没状況調査の実施
  3. 学習会・集落点検の実施
  4. 対策スケジュールの決定、対策の実施
  5. 取組結果の県内への普及

イノシシ被害の実態把握と知識習得

1年目は、主に実態把握および知識の習得です。

まずは、集落内に10台の自動撮影カメラ(センサーカメラ)を設置し、加害獣の出没情報を確認するとともに、獣害対策のための集落点検を実施しました。

自動撮影カメラの結果は…
私も動画を見せていただきましたが、森からイノシシが湧いてくるような、そんな行列をなすイノシシの映像で、ココの対策は大変だぁ…と思ってしまうような様子でした。

トレイルカメラに映るイノシシ
画像:トレイルカメラに映るイノシシ

どこぞここぞに、イノシシの瞳が…
(写真引用:文末に引用先を示しています)

集落点検では、被害状況、侵入経路や誘引因子などの調査を実施し、これらの結果(情報)をみんなで共有・意見交換を行っています。

ここで、大きな成果となったのは、「被害実態の地図化=見える化」だったそうです。

イノシシ被害実態の地図化
画像:イノシシ被害実態の地図化

(当日配布資料より転写)

この『見える化』によって、しっかりと情報を把握することで、皆さんの意識がまとまったといいます。
やはり、共通で認識するという作業はとても大切なのですね。再認識です!

イノシシ対策の実施

翌平成27年度は、実際に対策を実施です。

まずは、イノシシの侵入防止対策として、電気柵、およびワイヤーメッシュ柵を整備することとしました。

効果的な柵の設置箇所や種類、延長等を検討、さらに地域住民をはじめとする関係者の合意形成や共通認識づくりを入念に行ったそうです。

イノシシ被害を防ぐには⇒

このような、事前の適切な準備、情報共有があったことによって、電気柵の設置作業には、50名もの関係者が集まって、作業を1日で完了させたそうです。

しかも、電気柵の総延長は7,000mを超える距離だったとか。
恐るべし、気合の入ったマンパワーです!

電気柵の設置作業1
画像:電気柵の設置作業1

朝7時に集合!(写真引用)

電気柵の設置作業2
画像:電気柵の設置作業2

8月の炎天下の中での作業でした(写真引用)

そして、秋にはワイヤーメッシュ柵の設置にも取り掛かりました。

ワイヤーメッシュ柵設置作業
画像:ワイヤーメッシュ柵設置作業

(写真引用)

ワイヤーメッシュ柵設置のポイント

①傾斜地から離して設置する

傾斜地から離して設置する
画像:傾斜地から離して設置する

傾斜地のすぐそばに金属柵を設置すると、動物は傾斜地の上から柵を飛び越える場合があります。
傾斜地からは離して設置しましょう。

②柵のそばの藪をなくす

また、「イノシシを寄せ付けない環境づくり」として、耕作地周辺の藪の刈り払いを実施しています。

耕作地周辺の藪の刈り払いを実施1
画像:耕作地周辺の藪の刈り払いを実施1

(現地視察時撮影)

耕作地周辺の藪の刈り払いを実施2
画像:耕作地周辺の藪の刈り払いを実施2

(現地視察時撮影)

この作業によって、里山林の見通しを良好な状態として、イノシシが警戒して田畑に近づきにくい環境を作り出しています。

柵のそばの藪をなくす
画像:柵のそばの藪をなくす

柵のそばの藪は動物の隠れ家になります。
動物は藪に隠れながら、余裕を持って柵を観察できます。
柵のまわりをうろつき、地際の隙間などを探して中に入ろうとします。
ゆっくり柵の探索をさせないために、柵の外際3m程度の刈り払いを行いましょう。

まとめ

なお、栃木県では「とちぎの元気な森づくり県民税事業」において、野生獣被害低減のための里山林整備への取組支援を行っており、今回の西明寺地区もこの事業を活用したそうです。

地域の制度を最大限に活用するのも、チェックポイントですね。

ちなみに、電気柵設置後は速やかに365日24時間稼働、地域住民によって電圧チェックや柵周辺の刈り払いなどがしっかりと実施しているとのこと。

このような継続的な努力によって、“現状では農作物被害は発生しておらず、効果は十分に発揮されていている”とのことでした。

最後に、西明寺地区のリーダーから、今回の事業にかける熱い思いをお伺いしました。

私たちの想いは、「イノシシ対策は手段の1つであって、地区の人々の想いは『先人から引き継いだこの豊かで美しい地域の環境を、将来の世代により良い姿で残していく』ことだ」と、断言されていた。感動です。

益子町西明寺地区の取組の詳細は、以下のサイトでも閲覧することができます。
ぜひ、閲覧してください、参考になります!

栃木県HP
http://www.pref.tochigi.lg.jp/d52/kikaku/zyuugai/higaitaisakutop.html

益子町HP
http://www.town.mashiko.tochigi.jp/Page/Page001440.html

※1鳥獣管理士
鳥獣管理士は、鳥獣管理の専門的な教育を受けた方を対象に、一般社団法人鳥獣管理技術協会が資格試験を実施して認定する技術者資格です。

※引用:上記に示した栃木県HPおよび益子町HPの掲載資料から引用させていただいています。

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この記事を書いた人

井上 剛

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