地下足袋登山のススメ~履けばイノシシ気分?~
投稿日 : 2016年01月21日
更新日 : 2024年04月22日
こんにちは、鳥獣被害対策ドットコムの久野です。
私事ですが、昨年、登山靴が壊れたのをきっかけに、思い切って、山用の靴を登山靴から地下足袋に替えてみました。
地下足袋は、主に高所作業や、お祭りで使われますが、実は、一部の登山者にも根強い人気があります。
目次
地下足袋の種類
地下足袋とひとくちにいっても、
- スパイク付き
- 指先ガード付き(安全靴のようなもの)
- 防水タイプ
- 保温タイプ
- クッション入り
など、多種多様な商品が現在開発されています。
なかでも、私が使っているものは、一般に「縫い付け式」と呼ばれる、足袋部分とゴム製の靴底部分を、縫い付けて合わせたものです。
歴史が古く、作りが簡素で、特に底が薄い部類に入ります。
地下足袋と登山靴の比較
地下足袋は、登山靴と比べ、防水性、耐久性に劣り、底が薄いため、足への衝撃も強くなります。
しかし、大地を踏みしめる感触が足裏にダイレクトに伝わってくるため、土の質感の些細な変化を、足裏から感じ取ることができるという特徴があります。
僅かな環境の変化をとらえる感性を磨くことで、動物に気づかれないように、自然にくくり罠を設置する技術が向上する!…ような気がします。
また、地下足袋を履くことで、野外における足運びが自然と慎重になります。
登山靴の場合、多少の石を踏んでも問題ないような、厚い靴底に加え、捻挫防止や長時間の歩行による疲労を緩和する目的で、足首の可動域が狭まっているため、下山時などで段差を降りるときに、ついつい乱暴にかかとを着いてしまいがちです。
特に、疲れているときに、下図のような歩き方になってしまう方が多いですが、地面からのインパクトが直接ヒザにかかるため、ヒザを故障する原因になるといわれています。
しかし底の薄い地下足袋を履いていれば、衝撃を避けるために、自然とつま先から優しく着地するようになります。
ふくらはぎと太ももの筋肉を使うので、毎回筋肉痛になってしまいますが、関節への衝撃は、ソフトな着地によってかなり緩和されます。
地下足袋とイノシシの足の構造の類似について
さて、足先が2つに分かれた形状と、つま先で着地する足運び、地下足袋の特徴を客観的に観察してみると、とても動物的であることに気づきました。
特に、2つの蹄(ひづめ)で山を駆け回る、イノシシ、シカなどの偶蹄類に似ています(…似ていませんか?)。
蹄行性(ていこうせい)動物
イノシシのように、蹄を使い、かかとを地面につけないで歩く動物を、蹄行性(ていこうせい)動物と呼びます。
蹄行性動物は、人間でいうと、バレリーナのように爪の先だけで立っているような状態なので、その分、脚全体が長くなり、速く走れるような体のつくりになっています。
しかし一方で、接地面積が小さいために、地面が軟らかい場所では体が沈みやすく、イノシシを含む多くの蹄行性動物が、多雪地における移動を苦手としています。
実際、日本において、イノシシは、1冬当たり30cm以上、積雪日数が70日を超える地方などには分布していないとされています。
※近年では、東北地方や北陸地方の多雪地でも生息が確認され始めており、分布が徐々に北へ広がりつつあります。
イノシシの足には、主蹄と副蹄で計4つの蹄がありますが、主蹄は人間でいうところの第3指(中指)と第4指(薬指)にあたり、副蹄は第2指(人差し指)と第5指(小指)にあたります。
なお、第1指(親指)は退化しています。
趾行性(しこうせい)動物
ちなみに、蹄行性動物のほかに、かかとをつけず、足の先の部分(人でいうと、背伸びのときの足の状態)で歩く動物を、「趾行性(しこうせい)動物」といいます。
※指行性とも書く。
(例:イヌ、ネコ、タヌキ、キツネ)
蹄行性動物と同様、高速での走行に適しています。
蹠行性(しょこうせい)動物
また、我々人間を含む、かかとを地面につけて歩く動物を、「蹠行性(しょこうせい)動物」といいます。
(例:ヒト、サル、アライグマ、クマ)
かかとが地面につくため、直立時の安定性に富み、手を器用に使う動物が多いです。
動物のカラダの構造を理解して獣害対策に活用する
以上のように、動物のカラダがどうなっていて、どういう仕組みで動いているのか、よく調べて理解することは、くくり罠を踏ませるためのひと工夫や、効果的な防除などに役立つのではないかと思います。
みなさんも、詳しく知りたい動物がいる場合、ぜひ図書館などで、いろいろと調べてみることをオススメします。
さらに、図書館まで地下足袋を履いて歩いて行けば、足のトレーニングにもなって一石二鳥ですよ!!
(※)環境省の詳細内容は以下をご確認ください
https://www.env.go.jp/press/files/jp/26915.pdf
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