【イノシシの止め刺し】補てい具(保定具)を使って安全に止め刺しを行う方法
投稿日:2020年9月24日
運営会社:株式会社 地域環境計画
投稿日 : 2021年04月12日
更新日 : 2024年02月09日
「鳥獣被害対策ドットコム」の成田です。
今日の鳥獣害対策の知恵袋は、箱わなでのイノシシ捕獲中に起きた珍しい事例のお話です。
2021年2月、イノシシの捕獲を目的として箱わなを設置、誘引状況と捕獲の瞬間を観察するためトレイルカメラを設置していました。
ある日、餌の追加とカメラのデータ回収のために箱わなを設置した場所に向かうと、カメラが泥だらけになり地面に転がっているではありませんか!
幸いSDカードのデータは無事だったため、早速撮影データを確認してみたところ、なんと!カメラは誘引していたイノシシに壊されていたことが判明しました。
そこで今回は、イノシシにカメラを破壊されてしまった私の実体験をもとに、トレイルカメラ設置の際の留意点と、誘引捕獲におけるトレイルカメラの必要性についてお話しします。
今回お伝えする、
が、あなたの狩猟に役立つヒントやきっかけになればと思います。
目次
私、「鳥獣被害対策ドットコム(運営会社:株式会社 地域環境計画)」の成田は現在、福岡県在住で、毎年11月から3月までの猟期は狩猟に勤しむハンターです。
銃猟でシカやカモを捕ることが主ですが、ここ3年は罠猟にも精を出し、2020年度猟期は箱わなでのイノシシ捕獲を計画していました。
ここ福岡県もイノシシが多く、私が狩猟の拠点としている宮若市の山中にも、多くのイノシシの痕跡であふれていました。
そんな中、2020年10月末にイノシシ捕獲のため「大型獣用箱わな 栄ヒルズ E type No.601」を設置し、米ぬかでの誘引を開始しました。
そして、誘引状況の観察や捕獲の瞬間の撮影を目的として、箱わなと一緒にトレイルカメラ「Bushnell ブッシュネル トロフィーカム 24MPローグロウSC(※販売終了)」を設置しました。
箱わなを利用した誘引捕獲においては、罠のトリガーを入れるタイミングが非常に重要です。
捕獲を焦り、餌付けが十分にできていない内にトリガーを入れてしまい、失敗してしまうケースはよく聞く話です。
そうならないために、トレイルカメラで対象獣の様子をしっかりモニタリングし、最適な捕獲タイミングを計っているのですね。
ちなみに、今回使用した機種「Bushnell ブッシュネル トロフィーカム 24MPローグロウSC(※販売終了)」は、以下のような特徴があります。
ノーグロウライト(不可視光線フラッシュ)に比べ明るく撮影ができるため、調査を含めたデータ収集として重宝します。
※ただし、ほんのり明るく光るローグロウライトは、特に夜間撮影時、動物に警戒される恐れがありますので、単純な捕獲目的だけであれば、ノーグロウライトの機種をおすすめします。
トリガースピード(赤外線センサーが動体の熱を感知してからシャッターを切るまでのスピード)が非常に早いので、取りこぼしを減らすことができます。
リカバリータイム(撮影終了後、次の撮影準備ができるまでのカメラの回復時間)が短いため連続的な撮影を必要とする環境に向いています。
カメラは箱罠全体が移るアングルで、罠から約3m離れたスギの木に設置し、さらに盗難防止目的に鉄製ワイヤーと南京錠も装着しました。
過去、アライグマの調査業務で、低く設置していたカメラがイノシシに鼻でつつかれアングルがずれた経験があったので、今回は、ある程度イノシシにいたずらされないであろう高さで設置した……つもりでいました……この時までは。
餌付けからほどなく、イノシシの誘引をカメラで確認、約1カ月半の誘引期間を経て、2020年12月28日に無事、成獣雄のイノシシの捕獲に成功。
年明けには2頭目を捕獲しようと、再度誘引を開始、その後、悲劇が起こります。
2020年1月末に、2頭目の誘引を確認。
2~3週間ほどかけて餌付けを行って、イノシシが油断したところで罠のトリガーを入れようと、ワクワクしながら迎えた2020年2月13日、その日も毎週のように、米ぬかの追加、カメラのSDカードと電池を取り換えるために箱わなに向かいました。
「あれ?……カメラがない!?」
一瞬「やられた!誰かに盗難された!!」と頭をよぎりましたが、「……?……木に固定するためのベルトだけが残っている?」
スギの根元に目をやると、泥だらけでフタの空いた自動撮影カメラが転がっていました。
手に取ってみると、カメラの状態はひどいもので、ベルトとワイヤーを通す部分のフレームが完全に破壊され、パッキン部分にも破損が見られました。
破壊されたカメラを拾った時点でも私は、「狩猟者のことを嫌う人が嫌がらせで破壊したのか?」と、ヒトが犯人であると考えていましたが、そもそも箱罠を設置した場所は、ほぼ狩猟者以外入ってこない場所。
もちろん、周辺住民の批判を避けるため、事前に土地の所有者にも承諾はもらっていました。
幸いカメラの撮影機能とデータは無事だったので、SDカードに保存されていたデータを確認することができました。
早速、データチェックをするとそこには……、2020年2月11日深夜1時、罠に誘引されたイノシシが写っていました。
犯人の検討をつけていた私はこれを見て「……もしや……」と思うようになりました。
罠内の餌は全て食べ尽くされていたため、次第に罠周辺の匂いを嗅ぎまわる動きをします。
その後、カメラに近づくイノシシが撮影され、30秒のインターバルに入ります。
※この時のカメラは、センサーが反応して60秒の動画撮影の後、30秒のインターバルを設けるよう設定していました。
そして、30秒インターバル後の次の動画では、カメラのアングルは地面の下を転がっていました。
私の考えた「もしや」が的中、この動画で犯人はイノシシだと判明しました!
動画はしばらく、地面からのアングルで罠の入り口付近を映していましたが、日中をまたぎ、11日23時頃、カメラにかみつくイノシシの鼻が写ったところで記録は終わっていました。
私が動画を見るまで、犯人がイノシシだと思わなかったことには理由がありました。
それはカメラの設置位置です。
設置したスギの木は箱罠から若干斜面下側に位置していたため、高さはもちろん、地面からの距離もある位置でした。
実際の設置位置と高さは以下の通りです。
つまり、「よほど大きい個体であるか、または木にもたれかかるような無理な体制をしない限り、トレイルカメラに届きはしないだろう」と考えたからです。
加えて、二回目の誘引を開始して以降、カメラに写っていたのは、さほど大きくない印象のイノシシだったので、「まさかこの位置のカメラに……」と思い込んでいたこともあります。
私は、カメラをイノシシに壊されたショックで、意気消沈し無気力状態になってしまいました……。
しかし、カメラを破壊した犯人のイノシシを、実際にこの目で見なければ気が済まなかったので、意を決して誘引を再開することにしました。
「絶対に犯人を捕まえてやる!」
そして、2月19日、米ぬかが食べられていることを確認した私は、「いける!」と判断しトリガーを作動、翌20日、ついに雄成獣のイノシシの捕獲に成功したのです!
捕獲されたイノシシの体サイズは、全長100cm、体高62cmであり、カメラを破壊された際に撮影されたイノシシと同サイズであったことから、この個体が犯人だと裏も取れました。
改めて、捕獲したイノシシの計測した体サイズと実際目にしたサイズ感から、「なるほど、このサイズのイノシシであれば設置したカメラ位置にも十分届き得る」ということが理解できました。
カメラの設置状況と捕獲されたイノシシのサイズを踏まえ、破壊された原因を考察しました。
原因は大きく以下の3つが挙げられます。
「イノシシが執拗なまでにカメラに興味を示すことはないであろう」という固定概念があり、多少高い位置とはいえ、ギリギリ届いてしまう位置に設置してしまったこと。
そして、カメラでイノシシを確認した段階で、箱罠のマス目等で体サイズを正確に測る事を怠り、おおよその感覚で体サイズを想定してしまったこと。
今回設置していたカメラには盗難防止目的に、金属ワイヤーと南京錠を装着していたのですが、金属ワイヤーが多少垂れ下がっている状態でした。
イノシシの体サイズがカメラ設置位置に届くか届かないかの高さではありましたが、おそらくイノシシは、この垂れ下がった金属ワイヤー部分に噛み付き、無理やり引きはがしたのではないかと考えられます。
いくらカメラに届くとは言え、イノシシがここまでカメラに執着した事例には初めて遭遇しました。
カメラに執着したのには何か理由があるのではないかと、よくよく考えてみると、罠の誘引に使用していた「米ぬか」、これが原因かもしれないと思い至りました。
私は誘引されていたイノシシ以外の個体にも罠に興味を示してもらうために、罠の外側にも米ぬかの粉末を多少撒いていました。
イノシシがカメラを破壊する直前は、すでに罠内の米ぬかがなくなっていましたから、イノシシは、罠周辺の匂いを嗅ぎまわり、地面を掘り起こし始めました。
これは、罠内部の米ぬかがなくなっていたため、外側の粉末の匂いに反応しての行動だと考えられます。
これだけ誘引餌に執着するイノシシ。
そして、誘引餌の米ぬかを追加する際、手は米ぬかまみれになります。
あくまで私の想像になりますが、その手でカメラのSDカード、電池の交換をしたため、カメラにも米ぬかの匂いが付いてしまい、イノシシがトレイルカメラに興味を示してしまったのではないでしょうか。
今回の事例を踏まえ、設置するトレイルカメラをイノシシに破壊されないための対策としては、以下の3つが挙げられます。
すごく当たり前のことですが、今回カメラが破壊された最大の原因は、設置位置が低かった、これにつきます。
最初から高い位置に設置していればよかったのですが、
これらの条件を満たす設置位置を選定するとなると、実際の現場では大分位置が限られてきます。
そして、今回も上記条件を満たす位置を選定した結果、イノシシがギリギリ届く位置になってしまったというわけです。
これを解決する策として、「ダイレクトカメラブラケットセット/ダイレクトツリーマウントセット(※オプションパーツ)」の活用があります。
これを使用し木に設置することで、カメラの撮影アングルを自由に調整することが可能になります。
トレイルカメラのセンサー反応距離内に設置可能な木があれば、イノシシが確実に届かない高さに設置し、上から見下ろす形での撮影が可能になります。
※オプションに対応していない機種もあります。
また、破損を防止するスチール製のボックス「セキュリテーボックス(※オプションパーツ)」も有効です。
トレイルカメラは基本的に野外での設置、使用を想定した機材とは言え、ほいほいと買い換えられるほど安価ではありません。
また、貴重な撮影データを保守する意味でも、可能な限りカメラその物を補強する重要性は極めて高いです。
※オプションに対応していない機種もあります。
嗅覚が鋭いイノシシです。
これについてはどれだけ対策しようと、気休め程度であると思いますが、
など、カメラに余計な匂いを付けない工夫をすることも必要かもしれません。
「もしかしたら、動物に壊されるかも、誰かに盗まれるかもしれない……」と、心配してトレイルカメラを現場に設置しないより、上記原因と対策を講じたうえで、トレイルカメラを設置することで、動物にカメラを破壊されるリスクを軽減でき、安心安全に、気持ち的にも余裕をもってカメラの運用ができます。
トレイルカメラを活用した誘引捕獲では、
このようなメリットがありますから、トレイルカメラは今や効率的な誘引捕獲をするためにはなくてはならないアイテムだと言っても過言ではありません。
トレイルカメラは機種ごとに機能、性能が違いますので、上でご紹介したオプションがセットできるかなども含め、最適な機種を選定しましょう。
今回使用した機種「Bushnell ブッシュネル トロフィーカム 24MPローグロウSC(※販売終了)」もぜひ参考にしてみてください。
※オプションに対応していない機種もあります。
といった方は、以下「トレイルカメラの選び方完全ガイド」を参考にしてみてください。
イラストや写真、動画も豊富ですので、分かりやすくトレイルカメラの比較選定ができるのではないでしょうか。
今回のことも含め、狩猟では予期せぬ動物の行動に驚かされることが度々あります。
しかし、銃猟にしろ、罠猟にしろ、野生動物の命を奪うという工程がある以上、動物の反撃、攻撃、予想外の動きによる突発的事故などのリスクをなくし、絶対安全な狩猟を行うことが何より重要です。
今回はカメラの破損だけで済みましたが、違った状況では人命に直結する事態にもなりかねません。
常に、「もしも」と「万が一」に備え、万全の体制を整えることが重要だと、今回の事例を通して狩猟者の皆さんにお伝えできれば幸いです。
今年度の猟期は4月15日をもって無事終了しました。
来年も安全な狩猟の元、ハンターの皆さんの役に立つ情報発信ができればと思います。
この記事を書いた人
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